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米大統領専用機内で記者団の質問に答えるトランプ大統領=1月9日(AP=共同)
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同盟・同志国との関係も顧みず、自国第一の保護主義に突き進むトランプ米政権の乱暴な動きを懸念する。
トランプ大統領が鉄鋼・アルミニウム製品の全ての輸入に25%の追加関税を課す布告に署名した。日本製品にも適用され、3月12日に発効する。
低迷する国内産業を守り、雇用を拡大したいのだろう。軍事にも使われる鉄鋼を米国内で安定的に生産すべきだとの安全保障上の必要性もあるだろう。
そうだとしても問題の大きい判断である。自由貿易を推進する国際秩序をないがしろにするかのように一方的な追加関税を課すのはあまりに独善的だ。
欧州連合(EU)は対抗措置を辞さない構えである。報復関税の応酬となれば米国を含む世界経済を下押ししよう。何よりも中国などと対峙(たいじ)すべき西側諸国の結束の乱れは避けたい。
日本政府が12日、米政府に適用除外を申し入れたのは当然である。日本の国益を損なうような米側の理不尽な措置には毅然(きぜん)と対処すべきである。
鉄・アルミへの追加関税は第1次トランプ政権でも実施したが、米国はその後、カナダなどを対象外にしたり、日本製品に無関税枠を設けたりした。こうした例外は撤廃される。
日本経済への影響は限定的との見方もある。鉄鋼製品の対米輸出はカナダなどが上位で、日本はさほど多くないからだ。だが、米国内に生産拠点を置く自動車メーカーなどにとって、関税で割高となる部材の調達コストがかさむ懸念は大きい。
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米国が鉄鋼などをターゲットにする背景には、政府補助を受けて過剰生産能力を持つ中国企業の安価な製品が世界にあふれる構造問題がある。中国の対米輸出自体はわずかだが、米政権は第三国経由で中国製品が米国に流入しているとみる。だからといって全ての国に一律の関税を課すのは無理があろう。
トランプ氏は既に、米国にとって貿易黒字国であるオーストラリアには免除を検討しているようだ。対日適用もディール次第の可能性があるだろう。
日本製鉄のUSスチール買収計画を巡り、トランプ氏は日鉄に過半数の株式を握らせない意向を示した。ただ、鉄鋼分野での日米協力の深化には異論があるまい。その流れを踏まえて対日関税の見直しを迫りたい。
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2025年2月13日付産経新聞【主張】を転載しています
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