トランプ米大統領がイスラエルのネタニヤフ首相との共同記者会見で、パレスチナ自治区ガザについて「米国が長期的に所有」して都市開発を進め、パレスチナ人や世界の人々が集まる場所にすると語った。
PM Netanyahu and President Donald Trump

ホワイトハウスで会談に臨むトランプ米大統領(右)とイスラエルのネタニヤフ首相=ワシントン(AP=共同)

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パレスチナ自治区「ガザ」を巡る乱暴ともいえる発言に国際社会から驚きと反発の声があがった。ただし、発言には検討に値する部分もある。それだけに米政府には詳しく説明してほしい。

トランプ米大統領がイスラエルのネタニヤフ首相との共同記者会見で、ガザについて「米国が長期的に所有」して都市開発を進め、パレスチナ人や世界の人々が集まる場所にすると語った。

イスラム原理主義組織ハマスによるイスラエル奇襲攻撃で始まった戦闘で、ハマスが実効支配するガザは荒廃した。住民は人間の盾にされ、200万人以上の人口のうち4万7千人以上が死亡したとされる。できるだけ早期に人々の生活を再建しなければならない。

トランプ氏のいう「所有」が領有を意味するならあってはならないことだ。住民の扱いをめぐって、トランプ氏の発言を、永続的な移住の強制とみなして批判する声もあがっている。

ルビオ米国務長官は、住民の移住は「ガザ再建の間の一時的」なもので、「所有」は「米国が再建に責任を持つという意志だ」と釈明した。ホワイトハウス報道官も「人々が平和に暮らせるようにするという提案だ」と説明した。

帰還を前提としない域外への強制移住は認められないが、再建のため住民が一時的に域外へ移動するのは検討に値する。

イスラエル軍が「ネツァリム回廊」から撤退後、移動するパレスチナ人ら=2月9日、ガザ北部ガザ市近郊(ロイター=共同)

考えてみてほしい。ガザは瓦礫(がれき)の山と化した。全住民を抱えたまま、不発弾の撤去や瓦礫の処理、都市再建を進めるのは困難を伴う。住民の暮らしは悲惨なままだ。ガザの地下にはハマスが掘ったトンネルがはりめぐらされている。大量の武器弾薬が隠匿されているはずだ。

ガザの住民に、一時的に域外で暮らしてもらえればハマスの武装解除や、無辜(むこ)の民とハマスの分離も可能になる。一時的な域外移動には、ハマスやハマスに与(くみ)する勢力は激しく抵抗するだろう。

だが、ガザの中途半端な復興を漫然と進めればハマスの戦闘拠点として復活する。ハマスが将来イスラエルと交戦すれば再び瓦礫の山になりかねない。

トランプ氏の発言は曖昧で、住民を一時的に受け入れる国があるかどうかも不明のため実現には困難を伴うが、吟味すべき問題意識はある。

2025年2月11日付産経新聞【主張】を転載しています

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