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ウクライナ東部ドネツク州で、休息するウクライナ兵ら=1月21日、(ロイター=共同)
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ロシアによるウクライナ全面侵略開始から3年経った。ロシアの目的は、ウクライナの中立化や特定の領土の割譲ではない。ウクライナ国家壊滅と全土の完全支配だ。これはプーチン氏を中心とするロシアの指導層とロシア国民の多くの強い信念で、何があってもロシアはこの目的を達成しようとするだろう。
不本意な停戦案だが…
トランプ米大統領は、現状占領ラインでの戦闘凍結、ウクライナの北大西洋条約機構(NATO)非加盟、ウクライナ支援継続という3つの条件で停戦を提案している。ウクライナは米国に依存しているので、不本意ながら、この停戦案を受け入れる用意はある。
しかし、ロシアはこの停戦案を受け入れないだろう。なぜなら、ロシアの目的はウクライナ全土の完全支配だが、この停戦案の通りにすれば、ウクライナ征服が難しくなる可能性があるからだ。
対ウクライナ支援が継続された場合、停戦後もウクライナは防衛力強化の路線を取り、対露防衛線の構築に力を入れるかもしれない。そうなると、再侵攻の時、ロシア軍は今回以上に苦戦するだろう。
だから、ロシアは交渉において、次回確実にウクライナを征服できる形での停戦条件を要求するだろう。例えば、対ウクライナ支援停止と、ウクライナ軍事力の制限だ。これを要求されたら、トランプ氏はどうするのか。
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米国の孤立主義への備えを
トランプ氏は米国を再び偉大な国にすると言っている。だが、偉大な国の指導者は、決して独裁者で戦争犯罪者の理不尽な、次の侵略を誘発するような要求を呑むはずがないだろう。
偉大な国の指導者なら、戦争をやめようとせず民間人を虐殺し続けている独裁者を力でねじ伏せ、戦争を止めるのではないだろうか。実際に、その気になればトランプ氏にこの戦争を短期間で止める手段はある。
ウクライナにかつてないほどの大規模な軍事支援を行い、強い力でウクライナがロシア軍を壊滅させ、ロシアの継戦能力を奪う―これならば、米国はロシアの要求を呑む形ではなく、常識的な条件で戦争を終わらせることができる。正しい判断がなされることが望ましい。
とはいえ、トランプ氏が正しい判断をするとは限らないのも現実だ。だから、欧州も日本も、米国の指導層の判断能力に振り回されることは危険だ。日欧ともに、最悪、米国が孤立主義と対外不介入主義の姿勢を取ることに備えなければならない。
日欧の〝本気〟が勝利を導く
トランプ氏の主張には、多くの疑問があるが、一つ、100%その通りで必ず耳を傾けなければならない話もある。それは、日欧は今まで防衛、安全保障を米国に丸投げして、防衛費に十分な予算や労力を充てなかったことだ。
これからは日欧ともに、防衛費を大幅に増やし、防衛力強化路線を取って、中露朝をはじめとする独裁侵略国家陣営を抑止しなければならない。そして、独裁侵略国家陣営の抑止に不可欠なウクライナ軍事支援にも、日欧はもっと大きな役割を果たす時期が来るかもしれない。
日欧が本気を出せば、ウクライナを勝利に導き、侵略国家ロシアの野望を挫くことができる。中国の野望も抑止できるはずだ。そして、本気を出した日欧を見たら、米国もより協力的になる可能性が高い。
著者:アンドリー・グレンコ(ウクライナ人国際政治学者)
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