参院選の公示を迎えた。7月20日の投開票日までに日本の針路を指し示す論戦が行われることを期待したい。
Party Leaders Depate Upper House Election Japan Press Club

参院選公示を前に、与野党の8党首が参加し行われた討論会。左から、参政党の神谷代表、共産党の田村委員長、公明党の斉藤代表、立憲民主党の野田代表、自民党総裁の石破首相、日本維新の会の吉村代表、国民民主党の玉木代表、れいわ新選組の山本代表=7月2日午後、東京・内幸町の日本記者クラブ

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参院選の公示を迎えた。7月20日の投開票日までに日本の針路を指し示す論戦が行われることを期待したい。

今次参院選の特徴は、その後の政権の構成に直結する重要選挙だという点だ。

衆院では昨年の総選挙で、自民党、公明党の与党が過半数割れとなり、少数与党政権となっている。さらに、石破茂内閣の支持率は低迷を続けているためだ。石破首相は参院選の勝敗基準を、非改選を含めた過半数を維持する、与党50議席という最低ラインに設定せざるを得ない状況だ。

自民党総裁の石破茂首相

与野党は枠組みを示せ

参院でも与党が過半数割れになれば、政権交代や連立の枠組みの変更もあり得よう。与党に加え野党各党も、国家の舵(かじ)取りに当たる覚悟が求められている。有権者に対し、具体的な政策を語ってほしい。

先の通常国会で与党は令和7年度予算を成立させるため、日本維新の会など野党側の主張を取り入れたが、場当たり的な対応が目立った。長期的な視点で政策を立案、遂行する態勢の構築が欠かせない。

石破首相や与党は、今の少数与党政権を続けるのか、連立の枠組みを変更する考えがあるのかについて語ってもらいたい。立憲民主党の野田佳彦代表、維新の吉村洋文代表、国民民主党の玉木雄一郎代表らも、与党から連立参加の申し出があれば受け入れるのか、参院でも自公が過半数割れすれば野党が結束して政権交代を目指すのかを明らかにしてほしい。

これらは有権者にとって重要な判断材料になり得る。何も語らず一任せよ、という態度をとるなら不誠実極まりない。

国民民主党の玉木雄一郎代表
立憲民主党の野田佳彦代表

参院選の大きな争点は物価高対策になっている。2日に行われた日本記者クラブ主催の与野党8党首による討論会でも中心的な議題となった。

与党が主に給付を訴えているのに対し、野党側は消費税の減税や廃止を掲げている。有権者の関心が高いテーマだが、それだけの論戦では不十分だ。賃上げが重要なのは言うまでもない。そのために日本経済の持続的成長の処方箋をもっと競い合わなければならない。

米価高騰の問題もある。備蓄米だけでなくブランド米も含めたコメ全体の店頭価格の抑制は道半ばだ。事実上の生産調整を続けている農政の見直しも論点になっている。コメ政策は有権者の関心事である。

ほかにも忘れてはならない課題がある。厳しい国際情勢への対応だ。

まず、日本の独立と繁栄の基盤となる安全保障である。日本が原油の大半を依存する中東では、イランとイスラエルが停戦した。だが、イランの核開発放棄は見通せず、戦火の再燃もあり得る。ロシアのウクライナ侵略は続いている。

憲法改正も重要争点に

米国が「世界の警察官」役を放棄して久しい。米国は同盟国に大幅な防衛努力を求めている。中国、北朝鮮、ロシアという核武装した専制国家に囲まれた日本は、安穏としていては平和を享受できない時代だ。台湾有事や朝鮮半島有事の抑止へ、どのように防衛力を充実させていくのか具体的方向性を語ってほしい。それを避ける政党、候補者は無責任である。

もう一つは日米関税協議だ。トランプ米大統領は一段と強硬になっている。「われわれが決める30%、35%といった関税を払ってもらう」と述べ、9日を期限とする「相互関税」の上乗せ分の一時停止については延長に否定的な考えを示した。

関税措置が是正されるどころか強まるようなら、日本経済に甚大な影響が出る。国益を守るために、どのような戦略を描きトランプ氏と対峙(たいじ)するのか、各党は見解を示すべきだ。

憲法改正も置き去りにしてはならない。憲法への自衛隊明記に加え、戦力の不保持をうたう第9条2項を削除し、「軍」の保持を認める必要がある。今後の震災などに備え、緊急事態条項創設も欠かせない。

安定的な皇位継承に向けた皇族数確保は日本の根幹に関わる。男系継承という最重要原則を踏まえた立法府の総意形成が急がれる。各党の考えに静かに耳を傾けたい。

選択的夫婦別姓制度は、片方の親との強制的別姓となる子供の立場を考えず、家族の一体感を損ね社会を動揺させる危うい主張といえる。冷静な論議を求めたい。

2025年7月3日付産経新聞【主張】を転載しています

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