
テヘランで演説するイランの最高指導者、ハメネイ師=3月31日(最高指導者事務所提供・ロイター=共同)
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イランの核開発問題を巡り、米国とイランが4月12日、中東オマーンで協議した。
1期目に核合意から離脱した米トランプ政権として、イランとの初の協議である。両国の代表団は19日にも再協議に臨む。イランの核開発は核兵器転用が可能な水準に迫り、中東最大の不安定要因となっている。
米国はイランの核開発に厳しい歯止めをかける合意を目指してほしい。同時に、西側諸国やイスラエルに攻撃を続ける親イラン武装勢力や、ウクライナ侵略を続けるロシアへの支援をやめさせなければならない。
協議はオマーン外務省の仲介による間接的対話だったが、終了後に両国代表が直接言葉を交わしたという。両国政府は「生産的で前向きな雰囲気」だったとしている。
もっとも、楽観は禁物で、核開発をめぐる米イランの対立は根深いものがある。協議の行方は予断を許さない。

米欧などが2015年にイランと結んだ核合意は、開発制限の見返りに制裁緩和を進めるものだった。トランプ第1次政権は合意内容は不十分として離脱し、制裁を再発動して「最大限の圧力」政策を推し進めた。
第2次政権は、バイデン前政権の宥和(ゆうわ)的な政策から、再び圧力政策に転じた。トランプ大統領は3月にイラン最高指導者ハメネイ師に協議を呼びかける書簡を送ったが、イランに核開発の完全放棄を求める姿勢は揺らいでいない。
イランは、濃縮度60%のウランを少なくとも275キロ備蓄している。核兵器級の90%まで数日で濃縮が可能だ。指導層は核兵器を作る意図はないとの詭弁(きべん)を弄している。弾道ミサイル開発も加速させ、ロシアに兵器を供給している。
改革派のペゼシュキアン大統領は核合意再建を通じて低迷する経済を立て直したいという。ただ、協議に応じた最大の理由は、昨秋のイスラエルによる報復空爆で、国内の防空施設が壊滅的な損害を受けたことだ。
トランプ氏は合意が不可能な場合の武力行使も示唆している。イスラエルを巻き込んだ軍事衝突に発展すれば影響は計り知れない。原油の9割超を中東に依存する日本のエネルギー安全保障を直撃する。北東アジアにおける対中抑止力強化にも支障が生じる恐れがある。
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2025年4月15日付産経新聞【主張】を転載しています
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