
ワシントンで握手する赤沢経済再生相(右)とラトニック米商務長官=9月4日(代表撮影・共同)
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トランプ米政権が日本からの輸入自動車の関税率を27・5%から15%に引き下げた。
日米の関税合意に基づき、トランプ大統領は9月4日に自動車関税を引き下げる大統領令に署名していた。
ただ、トランプ政権発足時の2・5%と比べ高い関税率であることには変わりがない。国内自動車メーカーは生産体制などサプライチェーン(供給網)の再構築を進め、国内産業への影響を最小限にとどめてほしい。

トランプ政権は貿易赤字削減などを目的に、4月から輸入自動車に対し25%の追加関税を課した。これに伴い、日本車の関税率は27・5%に引き上げられた。日本政府は追加関税の撤廃を求めて米政府と交渉したが、7月に関税率を15%とすることで最終的に合意していた。
15%に下がったとはいえ、自動車各社の収益への影響は大きい。令和8年3月期のトランプ関税による影響額は、トヨタ自動車が営業利益ベースで1兆4千億円の減益要因となるのをはじめ、自動車大手7社合計で約2兆7千億円に上る。
こうした影響を最小限にとどめるため、各社は今後、本格的に対策を進めることになる。

関税率が15%に定まったことで、関税引き上げ分を現地の販売価格に転嫁する動きが広がるとみられる。
6年の国内自動車生産台数約823万台のうち、輸出向けは半数強を占め、このうち約3分の1が米国向けだ。値上げにより販売が落ち込めば、輸出減少を通じて国内生産への影響は必至だ。車種によって値上げ率を変えるなど各社の価格戦略が問われる。
生産体制を含め、最適な供給網の再構築も重要だ。関税引き上げ分を転嫁しても販売への影響が少ないとみられる高級車などを中心に日本からの輸出に切り替え、多くの販売台数を期待できるハイブリッド車(HV)などを現地で生産することも想定されている。
部品メーカーなど国内取引先への影響に配慮しながら進めることが求められる。
自動車産業は関連産業を含め約550万人が従事する最大の基幹産業である。トランプ関税の影響を最小限にとどめるため、政府も関連する中小企業などの支援に万全を尽くしてもらいたい。
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2025年9月17日付産経新聞【主張】を転載しています
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