大阪・関西万博で、民間会社として出展している台湾が、会場の外で文化・アートで台湾をアピールしている。
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VS.で展開されているビジュアル・アート(主催者提供)

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大阪・関西万博で、日本に登記した台湾の民間企業「TECH WORLD」としてパビリオンを出している台湾が、8月2日から会場の外で「We TAIWAN」のアートプログラムを展開している。

日本と台湾の文化交流

大阪・北区のイベントスペース「VS.」でビジュアル・アートが展開されている。ホログラフィック・プロジェクションマッピングで空や海、クジラなどが15mの高さの壁に映し出され、絵画の世界に没入することができる。「TECH WORLD」で展開している同じ技術だ。

絵画の世界に入りこむことができる(杉浦美香撮影)

染織工芸家の陳景林氏の藍染の絞り染め作品「母なる台湾の河」も初公開するとともに、台湾で使用している植物染料の植物の写真と染物の実物を並べ、学べる。

陳氏は、「台湾は高い山があり、台湾独自の熱帯の植物だけではなく、柿や藍など日本と同じ植物染料も使う。日本の西陣織の染色技術を学ぶために日本から先生を招いたこともある」と染色を通じた日台交流について語った。

自分の作品を説明する陳さん(杉浦美香撮影)

「We TAIWAN」は台湾の文化部と台北駐日経済文化代表処台湾文化センターが主催。大阪市内4か所を会場に8月20日までアートプログラムを実施、総勢545人のアーティストが参加している。

台湾の染色の展示(杉浦美香撮影)

We TAIWANに込められた意味

台湾は、博覧会国際事務局(BIE)に加盟していない。このため、万博にパビリオンを出せず、民間の日本企業「玉山デジタルテック」として民間企業枠で出展している。案内地図にも台湾という文字は一つもなく、外からは台湾とはわからないが、一歩中に入ると台湾が誇る半導体技術やアート、豊かな自然や観光地を紹介する仕組みになっている。

一方、8月2日から約20日間にわたって万博会場の外で開かれるイベント「We TAIWAN」はアートで台湾を前面に押し出している。来日した台湾の文化部政務部長(副大臣)、王時思さんは「台湾はいろんな国際的なイベントに参加できない。今回、万博会場ではないが、アートで台湾を発信したい。日本の皆様との友情で、世界は誰一人排除されてはならないということを証明したい」と語った。

インタビューにこたえる王さん(杉浦美香撮影)

在日台湾人の想い

日本台湾後援会の陳天隆会長は「WE Taiwan(のプロジェクト)が関西万博で公式に出展できなかったのは残念だが、芸術展示を通じて台湾を発信する試みは、戦略的価値と文化的意義がある」と話す。「万博は世界の視線が集中し、各国が自らの魅力を競い合う舞台だ。民間としてのパビリオン参加であっても、文化的な独自性と創造性があれば、十分に国際的な注目を集め得る。(万博会場の中と外で)芸術、デザイン、技術を融合させた表現は、政治的制約を超え、台湾の多様性と革新性を印象づける力を持っている」と意義を語った。

在日台湾人の視点として、「日本は芸術やデザインに対する理解度が高く、政治色を抑えた文化交流は受け入れられやすい。生活感と人間味を伴った台湾像を形成する文化外交は、時として硬直的になりがちな政治的な国家宣伝を上回る効果がある。我々のコミュニティにも大きな意味を持つ」と結論づけた。

We TAIWANはアートを通じ、台湾を国際社会に語るイベントになっていた。

筆者:杉浦美香(Japan 2 Earth編集長)

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