
抗日戦争勝利80年記念行事で天安門楼上に並ぶ、中国の習近平国家主席(中央)とロシアのプーチン大統領(左)、北朝鮮の金正恩朝鮮労働党総書記=9月3日、北京(新華社=共同)
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中国共産党政権が北京の天安門広場周辺で抗日戦勝80年記念の軍事パレードを行い、新型兵器などの軍事力を誇示した。
天安門の壇上では中国の習近平国家主席の両隣にロシアのプーチン大統領、北朝鮮の金正恩朝鮮労働党総書記が並び、人民解放軍の行進に拍手を送った。いずれも反日的で核武装した国の独裁者で力による現状変更を狙っている。
国際平和を乱す今回の軍事パレードは容認できない。
天安門広場では1989年に民主化を求める学生らを人民解放軍の戦車が蹂躙(じゅうりん)し、多数の死者を出した。同じ場所での軍事パレードに独裁者が集う異様な光景は、ウクライナだけでなく日本周辺でも動乱の危機が迫っていることを物語っている。

習氏は演説で「戦勝国」の立場をアピールした。だが「共産党が日本の侵略と戦い勝利を収めた」という共産党政権の常套(じょうとう)句は史実ではなく虚構にすぎない。日本が大陸で主敵としたのは中華民国(重慶政権)の国民党軍だった。中国共産党の主力は奥地の延安に引きこもり、漁夫の利を狙っていた。そもそも共産党の中華人民共和国建国は戦後の1949年である。
今回の軍事パレードは、中国経済低迷の中、支配の正統性を強調したい共産党による、共産党のための、欺瞞(ぎまん)に満ちた「戦勝」記念行事である。
天安門壇上に並んだ約20カ国の外国首脳は露朝に加え、イランやミャンマーなど米欧が制裁中の国々も少なくなかった。従来の国際秩序に対抗する勢力を牽引(けんいん)するのが中国だと演出しようとしたのではないか。
鳩山由紀夫元首相がこのような行事に出席したのは常軌を逸している。日本では抗日軍事パレードを歓迎する声は皆無に近いことを指摘しておきたい。

ウクライナを侵略するロシアを北朝鮮が軍事的に、中国が経済的に支えている。台湾有事などで中露朝が連携すれば日本にとって未曽有の脅威となる。
軍事パレードに世界最大の民主国家インドのモディ首相は参列しなかった。国際社会は自由と民主主義の価値を掲げて結束したい。韓国の李在明大統領は欠席したが韓国国会議長が参列したのは残念だ。日本政府はトランプ米政権や韓国の李政権が中国に宥和(ゆうわ)姿勢を示さないよう働きかける必要がある。
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2025年9月4日付産経新聞【主張】を転載しています
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