自民党が、自党で占めてきた参院憲法審査会の会長職を立憲民主党に明け渡した。衆参双方の憲法審会長を、憲法改正に慎重な立民の議員が務めることになった。
Upper House Constitution Committee

参院憲法審査会に臨む与野党の議員=国会内(春名中撮影)

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自民党が、自党で占めてきた参院憲法審査会の会長職を立憲民主党に明け渡した。これで衆参双方の憲法審会長を、憲法改正に慎重な立民の議員が務めることになった。

極めて残念だ。憲法改正は自民の党是である。党総裁の石破茂首相は、これでいいと思っているのか。

居座りは認められないが、石破首相は続投の理由として「比較第一党としての責任を果たしていかねばならない」と語っている。憲法改正という重要事をリードすることは、比較第一党の責任であるはずで、首相は言行が一致していない。

記者団の質問に答える石破茂首相=7月23日午後、自民党本部(酒巻俊介撮影)

国会の審査会長や常任委員長などは、与野党に目配りしながら運営する立場である。そうであっても実際は、どの政党の議員が務めるかで議論の在り方は変わってくる。

参院選で自民、公明党、日本維新の会、国民民主党などいわゆる改憲勢力の政党は、非改選と合わせて国会発議に必要な定数の3分の2を維持した。その上、国民民主と参政党の躍進でその数を増やした。

衆院では3分の2を下回っている。参院で憲法改正の機運を高め、議論を進めるときであるにもかかわらず、改憲に後ろ向きの立民に参院憲法審会長の座を譲ったのは理解できない。

日本国憲法

日本の守りを確かなものにするため、憲法第9条を巡る改正は必要だ。自民や維新は第9条への自衛隊明記を主張している。巨大地震や有事などへの懸念が高まる中、緊急事態条項の創設も急務だ。衆院では自民、公明、維新、国民民主などは、国会議員の任期延長が必要との認識で一致している。

一方、立民は参院選公約に「自民党の9条改正案は、平和主義を空文化させる」と記した。自衛隊明記に賛成していない。議員任期延長を含む緊急事態条項の創設についても、憲法で参院の緊急集会が規定されていることや、緊急事態に応じた個別法の存在を理由に「定める必要はない」と否定している。改憲の議論をするとしながら実質的には護憲政党だ。

その立民に参院憲法審の会長職を渡したのが石破首相、自民の松山政司参院議員会長、石井準一参院国対委員長、森山裕幹事長らである。保守政治家の風上にも置けない。猛省しなければならない。

2025年8月4日付産経新聞【主張】を転載しています

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