インドとパキスタンが、カシミール地方で発生したテロ事件をきっかけに続けてきた戦闘で、両国は即時停戦に合意した。米国の仲介によるもの。
Kashmir ceasefire India Pakistan

カシミール地方のインド側支配地域で、検問所で警備に当たる治安要員=5月10日(AP=共同)

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インドとパキスタンが、カシミール地方で発生したテロ事件をきっかけに続けてきた戦闘で、両国は即時停戦に合意した。米国の仲介によるものだ。

カシミール地方は両国が領有権を巡り戦争や衝突を繰り返してきた「火薬庫」だ。両国は弾頭数で拮抗(きっこう)する核兵器を保有しにらみ合いを続ける。

不測の事態に発展しかねない緊張状態の下、短期間の交渉で停戦にこぎつけた米国の仲介努力は評価に値しよう。

ただし、双方は相手の停戦違反を主張しており、完全に収束するかは予断を許さない。インド太平洋地域の平和と安定の実現に向け、両国は最大限自制し停戦合意を守るべきだ。米国は引き続き両国の意思疎通と緊張の緩和を促してもらいたい。

カシミール地方のインド支配地域で、パキスタンの無人機による住宅への攻撃被害を調査する治安当局者ら (AP=共同)

軍事衝突のきっかけは、カシミール地方のインド実効支配地域で4月に起きた、26人の民間人が殺害されたテロ事件である。インド政府はパキスタンが関与しているとして、5月7日、パキスタン側にミサイル攻撃で報復した。

パキスタン政府は、インドの攻撃を「戦争行為だ」と非難し、ミサイルや無人機で反撃した。10日には、パキスタン側が首都近郊の空軍基地などを攻撃されたとして、インド側の空軍基地を攻撃した。

パキスタンのシャリフ首相が核兵器の管理を担う「国家指令本部(NCA)」の招集に言及したと報じられるなど、事態は緊迫した。

米国のルビオ国務長官らが停戦を働きかけた。トランプ大統領がSNSで「完全かつ即時停戦に合意した」と明かしたのは、ウクライナ和平が難航する中、自らの外交的成果を示したかったからだろう。印パ双方にとっても衝突の長期化を避けたいのが本音で、米国の仲介は渡りに船だったようだ。

日米豪印4カ国の協力枠組み「クアッド」外相会合に出席する岩屋外相(左端)=1月21日、米ワシントン(代表撮影・共同)

独立以来、カシミール地方の帰属を巡って争ってきた両国は、核弾頭約170発をそれぞれが保有して対峙(たいじ)する一方、国内には過激派組織を抱え、火種は絶えない。中国も同地方の一部領有権を主張し、インドとは国境紛争を続ける。地域紛争の連鎖に発展せぬよう、国際社会は監視を怠ってはならない。

印パ両国と友好関係を維持する日本も、停戦合意が確実に守られるよう働きかけを強めるべきである。

2025年5月13日付産経新聞【主張】を転載しています

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