Donald Trump Nov 6 reuters via kyodo

米フロリダ州の集会会場に登場したトランプ前大統領=11月6日(ロイター=共同)

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米大統領選で、共和党候補のトランプ前大統領が勝利宣言し、「繁栄した米国をつくりたい」と語った。12月の選挙人投票を経て来年1月20日に就任する。2021年1月以来の返り咲きとなる。

「米国を再び偉大に」「米国第一主義」などのスローガンを掲げた。インフレ(物価上昇)や不法移民の問題で民主党候補のハリス副大統領を批判し、有権者の支持を集めた。暗殺未遂を乗り越えた「強さ」も支持されたのだろう。

トランプ氏に注文したい。公約に沿ってインフレや不法移民など内政の諸政策を推進するのは当然だが、「内向き」の政治に終始しないでもらいたい。

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日本との協力を確実に

前回のトランプ政権は、専制国家中国の脅威をはっきりと指摘し、軍事的、経済的に抑止していくという歴史的決断を下した。それは民主党のバイデン政権にも引き継がれた。

新たなトランプ政権でも国際秩序を守るために行動することを期待したい。

8月16日、米ネバダ州ラスベガスで開いたイベントでせきをするバイデン大統領(AP=共同)

世界はトランプ前政権当時から大きく変わった。中国は経済不振に陥りながらも、台湾周辺や南・東シナ海で軍事的威圧を強めている。ロシアによるウクライナ侵略は3年近くも続いている。中東での紛争は終息の気配がない。

自由と民主主義、「法の支配」に基づく世界の秩序が、専制国家によって脅かされている。米国の行動力と民主主義諸国の結束が今ほど試されているときはない。

トランプ氏は、7月の共和党全国大会で訴えたように「米国の不和と分断」を修復しなければならない。トランプ政権が備えるべき相手は、自身を支持しなかった「内なる敵」ではなく、米国や民主主義国の存立と繁栄を脅かす専制国家だ。

世界の経済成長の中心地であるインド太平洋地域への関心を高めてほしい。地域最大の同盟国である日本やオーストラリア、カナダ、韓国などとの協力が欠かせない。

大統領選の最中には、中国による日本や台湾、フィリピンなどへの軍事的挑発が相次いだ。10月に台湾を囲む形で行われた中国軍の演習ではロシア軍の艦船が宮古海峡を通過した。台湾有事を想定した中露連携との見方もある。北朝鮮は新型と称する大陸間弾道ミサイル(ICBM)を発射した。

トランプ氏の台湾をめぐる認識には不安もある。共和党の政策綱領から1980年以来初めて「台湾の自衛を支援する」という誓約が抜け落ちた。トランプ氏が「台湾は防衛費を払うべきだ。われわれは保険会社となんら変わらない」と不満を語ったこともあった。だが、日米などが共有する「自由で開かれたインド太平洋」のためにも台湾海峡の平和と安定は死活的に重要だ。米軍の近代化を進め対中抑止に努めねばならない。

台湾の離島、金門島周辺を航行する中国軍補給船=5月29日(台湾海巡署提供・共同)
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ウクライナ支援続けよ

トランプ氏にはウクライナへの支援継続も望みたい。

派兵された北朝鮮軍の部隊がウクライナ軍と交戦したと伝えられる。ウクライナへの侵略国に北朝鮮が加わった。ここでもインド太平洋地域と欧州の安全保障問題はつながった。

トランプ氏は自身が大統領選に勝てば「すぐに停戦できる」と述べてきたが、停戦とは露軍の即時全面撤退以外にない。ロシアや北朝鮮に果実を与えれば、日本周辺での専制国家による侵略を誘発しかねない。

トランプ氏は同盟国に応分の防衛負担を求めるだろう。米国一国で専制国家を抑止できないため理解できるが、日本や先進7カ国(G7)、北大西洋条約機構(NATO)加盟国などとの協力も合わせて語るべきだ。民主主義国同士の重層的な同盟・協力関係が国際社会の安定につながり、米国の繁栄も支えているからだ。民主主義諸国の結束の乱れは中露など専制国家を増長させかねない。

トランプ氏は、バイデン政権が打ち出したインド太平洋地域の「インド太平洋経済枠組み(IPEF)」への不支持も表明した。米国の不在は、中国の地域での影響力を強めることになる。再考すべきだ。

US President Joe Biden announcing the Indo-Pacific Economic Framework (IPEF) inauguration meeting in Tokyo, with Prime Minister Fumio Kishida and Prime Minister Modi of India on May 23, 2022. (©Sankei by Ryosuke Kawaguchi.)

中東情勢も喫緊の課題だ。イスラエルとイランの全面衝突が懸念されている。イスラエルへの影響力を発揮し、事態の安定に努めてほしい。

石破茂政権はトランプ氏側と早期に接触し、信頼関係を築かねばならない。

2024年11月7日付産経新聞【主張】を転載しています

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