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KADOKAWAが心と体の性が一致しないトランスジェンダーの実態を取材した米ジャーナリストの翻訳本の刊行を中止したことへの波紋が広がっている。「女性の権利と尊厳を取り戻す会」共同代表の青谷ゆかり氏は「行き過ぎたトランスジェンダー医療のデメリットを知る機会が失われた」と指摘。「出版の機会が奪われたことで、安易に性別変更してしまう少女たちが増えかねない」と懸念している。
問題の書籍は、来年1月に刊行が予定されていたアビゲイル・シュライアーさんの著書「あの子もトランスジェンダーになった SNSで伝染する性転換ブームの悲劇」。
同書は米国の少女たちが容易に性別変更できてしまう実態が紹介されており、青谷氏は「先行する米国や英国などでトランスジェンダー医療がもたらすデメリットについて、日本語で知ることができる初めての本となったはずだ」と刊行の意義を強調する。
だが、国内での出版は中止された。青谷氏は貴重な機会が失われたことで、海外の事例で指摘されるように、性別変更する必要がなかった少女たちが流行に乗り、乳房や子宮を切除して第2次性徴を強制的に止めるような事態が起きてしまうのではないかと危惧を深める。
トランスジェンダーを巡っては、SNSなどを通じ、海外のインフルエンサーの考えに触れる機会が増える一方、海外では第2次性徴に伴う体の変化を一時的に抑制する作用を持つ薬剤「思春期ブロッカー」が浸透しつつある。
しかし、青谷氏は「性別を変えれば生きやすくなり、救われるといった考えは幻想に過ぎない」と指摘する。
青谷氏はそもそもトランスジェンダーがもてはやされる風潮の背景に、「女性はこうあるべき」という先入観の押し付けがあると分析。外科手術などで性別を変えた後、元の性別に戻ろうとする米国の「脱トランス者」が、当初性別変更を考えた動機を「女性はこうあるべきという体形ではなかった」と説明していることを例に挙げた。
こうした「痩身であるべき」「かわいくあるべき」「おしとやかであるべき」といった女性像に当てはまらないことが、少女たちが性別変更を思い立つ要因となっているとし、「少女たちに『自分は排除された』と勘違いさせる社会風土も、男の子になろうとする女の子が増えている要因ではないだろうか」と警鐘を鳴らした。
筆者:奥原慎平(産経新聞)