~~
今回は、練馬区立美術館の区民ギャラリーで7月2日から6日間、開催された、自主企画による「武蔵野の画家・悳俊彦の89年」(小回顧展)についてご報告したいと思います。
何の疑問も感じることなく長年同じような個展を続けてきた私ですが、今回初めて“回顧展”の形で展覧会を開催しました。多少の不安はありましたが、6日間が終わった今、思い返してみると、入場者数2300名という数字はおそらくこれまでの新記録でしょう。もっとも、隣で開催されていた「三島喜美代―未来への記憶」展から流れてきた入場者が大きかったかと思われます。しかしそれらの人達のほとんどが非常に熱心に私の作品も観て下さっているのを見て私は嬉しくなりました。
これからが楽しみな観客
また、初期から現在までを3つに分けての展示も、各時代の作品の変化がわかりやすく喜ばれました。なにしろ、私の歩んだ時代は、戦後初めてフランスの現代画家が紹介され、ピカソのキュビスムの流行、そしてアンフォルメルの運動が日本の若い画家達を虜にし、私もそれらの影響をまともに受けた、そんな時代でした。今回の展覧会の作品達がそれを雄弁に語っていたと思われ、これも今回の個展の見どころだったと言えるでしょう。
これらのシリアスな作品群の他に、かわいい小品達も展示台に並べられ、これも皆さんの人気を呼んだようです。そして子供連れの皆さんが楽しそうに熱心に観入っていたのも微笑ましく、これからが楽しみな観客に思えました。
来場者の視線
ここで皆さんの感想文の中から、いくつかご紹介したいと思います。
「とても豊かで楽しい絵と、落ち着いた武蔵野の姿が見ていて不思議なほど調和していました。これからも楽しませて下さい。」
「ありがとうございます。絵画制作の広がりと深みに触れることができて感動しました。沢山の刺激も受けました。私もずっと死ぬまで絵を描き続けようと思わされました。」
「何回観ても癒される絵です。素人の目しかないので表現しにくいのですが、自分の部屋にあったらいいなーと思える絵に会えて大きな幸せなひと時でした。有難うございました。」
「妻と拝見しました。とても一人の方が描いたとは思えないほど多面的でどの作品も素敵でした。特に“作品3”などの暖色が好きです。モノタイプのお魚や、子どもたちも温かく絵本を読んでいるような作品で楽しかったです。これからの作品も楽しみにしておりますので、お身体大切にして作家活動を充実してお過ごし下さい。」
「私は今まで生きてきて今日気付いたことがあります。色の少ない作品ほどイメージで様々な色を自分の中に見つけることができるという事を。本日観れて良かったです。」
心に響くアート
「いままで絵画を見て感動することがなかったのですが、悳俊彦さんの絵で初めて楽しむことができました。絵のジャンルのことはわからないのですが音楽を見ている様でした。」
「武蔵野に胸がざわつきました。国芳本も先生のご著書だったと知り驚きました。これからもお元気で。」
「『武蔵野平凡』から引用されていた馴染みのある景色や想い出に対する“いぶし銀”という表現にとても共感しました。また、背景を知ることで展示にて拝見した作品達をより理解することができました。長い間、作者の胸の中には幼少期の頃の記憶や想い出が、常に側にあったのだと絵を通して知ることができました。」
終わりに
全部ご紹介しきれませんが、嬉しい感想ばかりでした。しかし辛口の感想の方もきっとあったと思います。まずはこれに奢ることなく、高みを目指して頑張りたいと思います。
この展覧会のために協力を惜しまなかった家族をはじめ多くの方々、特に作品の撮影から案内状・パンフレット作成に全面的にご協力頂いた美術書編集者の堀川浩之氏には心から感謝しきれぬ思いでおります。有り難うございました。
関連記事:
いにしえの東京、武蔵野を描く画家、悳俊彦氏が小回顧展を開催 7月2日から7日まで
筆者:悳俊彦(洋画家・浮世絵研究家)