~~
早稲田大の一般入試で男子受験生が眼鏡型機器「スマートグラス」で試験問題を撮影、外部に流出させて解答を得ていた疑いが強まった。大学入試では過去にも、スマートフォンやマイクロカメラなどを利用した事件が発生。手口は基本的に共通しているが、根本的な対策はとれていないのが現状だ。
防寒、上着の袖に隠して
大学入試の不正は、令和4年1月の大学入学共通テストでも発生。試験中にスマホで撮影した世界史Bの問題の画像を家庭教師紹介サイトに登録する東大生らに送信したとして、警視庁が偽計業務妨害容疑で女子受験生を書類送検した。
また、同月の一橋大の留学生向け入試では、合格した中国人の男が同罪で起訴され、有罪判決を受けた。判決によると、数学の試験問題をマイクロカメラで動画撮影し、外部に送るなどしていた。
試験会場へのスマホの持ち込みは可能だが、同年時点では、電源を切った上で、持参したバッグなどに入れておくことを、机上の注意書きを通じて呼びかけていた。一方、翌5年の共通テストでは、試験開始前、実際に机の上にスマホを出すよう試験監督が指示。電源を切ってからバッグにしまうまでの一連の流れを確認する運用に改められた。
ただ、女子受験生は自身の手口について、スマホを上着の袖に隠して試験問題を撮影したと供述。会場内では上着の着用は禁止されておらず、当時は新型コロナウイルス感染対策で窓を開けた換気が行われていたため、防寒対策として上着の持ち込みが呼びかけられていた。
巨額経費がネックに
事件を受け、文部科学省はスマホ対策として電波遮断装置の導入も検討。ただ、巨額の経費が課題となり見送られた。
電子機器による不正行為を巡っては、平成23年に行われた京都大の2次試験でも発覚。仙台市の男子予備校生が携帯電話で問題をインターネット掲示板に投稿し解答を依頼したとして、京都府警が偽計業務妨害容疑で逮捕した。
海外でも電子機器を使った試験のカンニング行為は問題化。韓国では2004年、日本の共通テストに当たる「大学修学能力試験」で、受験生による携帯電話を使った大規模カンニング事件が起こった。受験生は携帯電話メールで外部と連絡をとって答えを教えてもらっており、韓国では05年から試験会場への電子機器の持ち込みが全面的に禁止となった。
一方で、スマホを取り締まっても、スマートグラスのほか、ペン型のカメラなど、隠れて撮影できる電子機器は多い。また、電波遮断装置を設置した場合でも、周辺の施設などに影響を及ぼす可能性があるとの指摘もある。