History Repeating Itself? Moves Afoot for Xi Jinping’s Ouster

 

 

「偉大で栄光、正確な中国共産党万歳!」。中国各都市の政府機関の壁によく書かれる標語の一つである。かつての党主席、毛沢東の言葉だが、いまも共産党の輝かしさを宣伝する文言として使われている。

 

標語の中にある「正確」という言葉がポイントで、「党組織の判断は常に正しい」を一番強調したいらしい。国家を運営する中で、党の指示は常に「最も適切」だと主張している。問題が発生したとしても「指示が徹底されなかった」と地方指導者個人などに責任を押し付けるのが、いつものやり方である。

 

しかし、2月3日に開かれた中国の最高指導部、政治局常務委員会で「異変」が起きた。会議で新型コロナウイルス感染拡大への対応について「欠点と不足があった」と総括し、初動に問題があったと事実上認めた。

 

感染が拡大するまでの情報隠蔽(いんぺい)、感染者を隔離しないなど、一連のずさんな対応に国内外から不満が噴出している。もはや地方指導者に責任を押し付けられるような問題ではなくなり、党指導部が自らの非を認めないと収まらないほど、追い込まれているといえる。感染拡大が収まった後、最高指導者である習近平国家主席個人の責任が追及されるなど政局になる可能性も否定できない。

 

猛威を振るう新型肺炎により中国各地の議会が延期となり、3月5日に開幕する予定の全国人民代表大会(国会)の日程すら流動的だといわれ始めている中、気になるのが4月に予定される習氏による国賓としての訪日への影響だ。中国外務省の華春瑩(か・しゅんえい)報道官は3日の記者会見で予定通り実現させたい考えを示した。

 

 

北京の改革派知識人は「困ったときに日本を政治利用する。いつものやり方だ」と指摘した。これまでも中国が困ったとき、状況改善の突破口に日本を使ったことが何度もある。1992年の天皇訪中を使い、天安門事件後の国際孤立を回避したことは有名だ。習氏自身も国家副主席時代に訪日し、天皇との会見を望む外国要人は1カ月前までに申請する「1カ月ルール」を破って強引に天皇陛下と会見したことを、党内の地位向上に利用した。

 

習氏が来日する4月ごろ、中国国内で感染が収まっているかは定かではないが、国際社会が中国からの「ヒトとモノ」を警戒し続けている状況は今と変わらないと考える。

 

そこで、習氏が中国の政財界など数百人を引き連れて日本に来れば、世界に向けた最高の「安全宣言」になる。日本の支援に感謝し、天皇陛下との握手で日中友好を演出すれば、香港デモ以来の外交上の孤立を回避することもできる。さらに訪日が成功すれば、国内での習氏の求心力も高まる。まさに「一石三鳥」だが、日本にとっては、中国を利するだけでメリットがほとんど見当たらない。

 

日本国内で習氏の訪日に反対する声が高まっている。安倍晋三政権は今、中国に対し「しばらく国内のことに専念してください」と習氏訪日の白紙化を提案すべきだ。

 

筆者:矢板明夫(産経新聞外信部次長)

 

 

2020年2月5日付産経新聞【矢板明夫の中国点描】を転載しています

 

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