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中国の習近平政権は、2023年の国内総生産(GDP)の成長率が名目4.6%、実質5.2%で、実質5%の目標を達成したと発表したが、信憑性はどうか。
中国のGDP統計はかなり前から、各地方の党幹部が党中央の掲げる成長率目標に合わせようとして、データを改ざんするという疑惑が消えない。そこで、GDPに大きく影響する不動産投資、純輸出、家計消費に関連するデータから、GDPの伸び率を筆者なりに粗計算してみた。
実態はマイナス成長か
不動産投資自体はGDPの10%以上を占めるが、電気製品など関連需要を含めると、その約3割になる。2023年の不動産投資は前年比16.7%減なので、関連需要込みで5%近くGDPを押し下げる計算になる。
輸出から輸入を差し引いた純輸出はGDPの3%以上を占める。2023年1〜11月合計の前年同期比は32.3%減で、1%程度GDPが減る。不動産関連と合わせると、6%程度のGDP縮小効果になる。
GDPの約4割を占める家計消費のデータは未公表だが、2023年の消費財の小売り高は前年比7.2%増である。それを家計消費とみなせば、GDPは2.8%以上押し上げられる。こうして3項目を集計すると、GDP前年比は名目で3%以上のマイナスになっておかしくない。インフレ率はゼロ・コンマ数%のマイナスだから、実質でも昨年の成長率は2%以上の減少になったとみておかしくない。
なお、これらの他、公共投資もカギになるが、習政権は人民元安を加速させかねない大型財政出動に慎重であり、GDPかさ上げ効果はほとんどないだろう。
日本企業の国内回帰を促せ
政権のGDP目標達成への執着は異常である。「中国経済衰退」の言説に対しても反スパイ法を適用するという党中央の路線と通じる。
GDP統計に象徴される情報の偽装と隠蔽工作は、中国への投資リスクを増大させずにはおかない。デフレ圧力にさらされる中国経済の落ち込みは長期化しかねない。2021年秋から始まった不動産バブル崩壊は未だに収まらず、最近ではノンバンクを中心とする金融不安が頻発している。
それに対し、習政権は公安警察にノンバンクと金融監督当局の幹部を拘束させ、情報を遮断するだけである。欧米企業や投資家は直接投資、証券投資とも大幅に減らしている。日本企業の一部はすでに撤退へと動いているが、多くは逡巡しているようだ。
この際、対中投資に完全に見切りを付け、国内回帰を急ぐべきではないか。岸田文雄政権は減税によって内需の拡大を確実にし、企業の国内投資を後押しすればよいだけだ。
筆者:田村秀男(国基研企画委員・産経新聞特別記者)
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国家基本問題研究所(JINF)「今週の直言」第1110回(2024年1月22日)を転載しています