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「ブラックスワン襲来」の不安

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9月5日朝、北京の天安門広場に1羽のブラックスワンが飛来して、しばらく止まった。北京日報の公式サイトは早速、写真付きでこの珍ニュースを報じ、SNSでも大きな話題となった。水も草もない「不毛の地」の広場にブラックスワンが降臨したのはどういうことか? それ自体、謎だが、多くの人々がこの出来事から連想してしまうのはやはり、かの「ブラックスワン理論」である。

 

それは、「全く予想外の出来事が発生した場合、それまでの経験・常識が通用しないため、社会や市場に極めて大きな衝撃を与えてしまう」という趣旨の理論だ。

 

2008年9月に起きたリーマン・ショックはこの理論の典型的な例だ。あるいは、19年12月に中国武漢から始まった新型コロナウイルスの世界的感染拡大もまた、恐ろしい「ブラックスワンの襲来」であるといえよう。

 

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実は、この数年間、中国国内において、各領域における「ブラックスワンの襲来」に対する危機感が広がっている。中でも、最高指導者の習近平国家主席は、「黒天鵝=ブラックスワン」という表現を好んで使い、さまざまな警告を発した。

 

例えば、19年1月、彼は地方と中央政府の幹部を集めた勉強会で金融問題との関連において「警戒すべきリスクとして黒天鵝を防がなければならない」と強調した。今年1月には、中国がさまざまなリスクや課題に直面していると認めた上で、「黒天鵝のような事象に備えるべきだ」との考えを示した。

 

習主席が警戒する「黒天鵝襲来」のひとつは債務危機の発生であろう。今、中国の国内企業や地方政府、および個人が抱える負債の総額は年間国内総生産(GDP)の5倍に相当する500兆元(約8500兆円)にも達している。今後、債務返済期に入ると、企業のデフォルト(債務不履行)・個人の破産・地方政府の財政破綻が相次いで起きてくるであろう。もちろん、債務危機の発生は金融危機の発生にもつながってくるから、中国経済に未曽有の大災難が降りかかってくる可能性が十分にある。

 

他にも、不動産バブルがいつはじけるのか、は、中国人がずっと恐れているもう1羽の「黒天鵝」だ。

 

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経済面だけでなく政治の面においても、災難が襲ってきそうな状況である。

 

8月29日、人民日報や新華社通信、解放軍報などはそれぞれの公式サイトで「革命宣言文」を同時に掲載した。当初、「李光満氷点時評」という個人のブログに掲載されたこの文章が、党中央直轄の主要メディアによって一斉に転載されたのは、極めて異例だが、さらに驚いたのはその内容である。

 

文章はまず、「中国では今、経済・政治・文化などの各領域で深い変革、すなわち革命が起きている」と断じた上で、「この革命は資本集団からの人民群衆への回帰、社会主義本質への回帰だ」と強調した。

 

そして、「人民を中心とするこの革命を阻止する者は全部切り捨てられよう!」と、あたかも政治粛清運動の発動を宣するかのような激しい言葉を発している。

 

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かつて、文化大革命を経験した世代の中国人なら、それを読んでまず、「文革の再来ではないか」との恐怖感に襲われるだろう。

 

だが、最近、習近平政権下で起きている民間企業いじめや芸能界粛清などの現象からすれば、この恐怖は決して根拠がないものではない。

 

だからこそ、前述の「ブラックスワン天安門降臨」に多くの人々が不吉の予感を覚え、おびえているのだが、当の習主席こそが、中国を襲ってくる大災難を兆すこの「黒天鵝」を放った張本人ではないのだろうか。(石平)

 

 

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2021年9月16日付産経新聞【石平のChina Watch】を転載しています

 

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