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中国漁船団の不法操業を許すな

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国民に危機伝えているか

 

この夏、わが国が新型コロナウイルス対策と東京五輪・パラリンピックの成功に向け奔走している間に、野心を持つ隣国は、日本の領土・領海を侵し主権を脅かしていた。しかし、政府はその事実を矮小(わいしょう)化し、国民に危機的状況を伝えていない。

 

今、海洋国家日本の政府が優先して実施すべきは、海洋安全保障施策の実践である。世界の海はつながっている。一国が海の秩序を守ることを放棄したならば、周辺海域の航行の安全は保障されず、水産資源の保護、海洋環境の保全も難しく紛争の誘因となる。

 

実際に日本政府が、領土領海を守ろうとする意志を明確に示さないため、隣国は侵略意識を助長し、支配海域の拡大、領土の奪取に動き出している。その海域では漁業活動も危険に晒(さら)され、海底資源・海洋環境調査すら実現が難しい。自国が主権を守る努力を怠っているのでは、同盟国を含めた国際社会の信頼も失うことになる。

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中国の海洋侵出は日本の平和を脅かしている。しかし防衛白書や外交青書など政府発行資料には中国を脅威と明言する記載はない。

 

2018年、中国海警局は軍事組織化され、今年2月に発効した海警法では、武力の行使を宣言した。これは、日本の海洋安全保障体制に対する挑戦であり、台湾を支援する米国への牽制(けんせい)である。

 

中国が尖閣諸島(沖縄県石垣市)の略奪を目指していることは明白である。中国が台湾を攻略するために、東シナ海における拠点となる尖閣諸島の支配は必要不可欠であるからだ。政府は、中国の脅威を国民に的確に伝え、有事を未然に防ぐ戦略を推進すべきだ。海上保安庁は尖閣警備において最善を尽くしているが、中国海警船は大型化、重武装化し、海保の対応能力をはるかに超えている。

 

 

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奪われたも同然の東シナ海

 

海保は、中国海警船の領海侵入を阻止できていない。海保頼みの戦略からの転換が必要だ。最も有効な戦略は、日本と同盟国である米国の持つ東シナ海における防衛力を開示することだと考える。尖閣諸島において日米共同訓練を行うなど、東アジアの海洋安全保障を推進する姿勢を示すことが、中国に対する抑止効果となり、アジアの平和に寄与することになる。

 

中国は、尖閣諸島を中国の領土であり、沖縄本島に近い沖縄トラフ海域までが、中国の管轄海域であると主張してきた。中国との対立を避けたい日本政府は、譲歩策として日中漁業協定を結び、日本管轄内への中国漁船の出漁を認めている。中国は1万隻を超える漁船を東シナ海に投入し、魚を取り尽くす勢いだ。九州沿岸の漁師は中国漁船団を恐れ、出漁を諦めるようになり漁業は衰退の一途だ。

 

沖縄県久米島沖のわが国の排他的経済水域内には銅の含有率の高い海底熱水鉱床があるが、中国は既にその海域での海底調査を行い鉱物資源のサンプルまで入手している。これでは、東シナ海は奪われたのも同然である。

 

日本海の大和堆海域では、昨年に続き、本年6月頃から1000隻を超える中国の大型漁船が出漁し、密漁を繰り返している。対応に困った水産庁は、漁期の6月12日から2カ月間の間に操業の自粛と解除を29回も繰り返した。昨年は9月30日から1カ月間の自粛を要請していた。2年続けての出漁自粛に廃業に追い込まれる漁業者も出ている。中国漁船団の不法操業を制止せず、日本の漁船を規制するなど本末転倒である。

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海洋国家日本の戦略的発信を

 

さらに、平和の祭典である五輪期間中にも中国の軍用機がわが国の防空識別圏に接近し、航空自衛隊はスクランブル発進を繰り返すなど、中国の攻勢は留(とど)まるところを知らない。

 

またロシアは7月上旬に日本海のわが国の排他的経済水域内にある大和堆海域に向けミサイルの発射訓練を行うと通告した。7月26日には、ロシアのミシュスチン首相が北方領土の択捉島に入った。しばらくは親密な関係だったプーチン政権は、強硬路線に転じ、領土の割譲を認めないことを憲法で規定し、北方領土問題解決の糸口を閉ざした。

 

韓国は五輪期間中も竹島の領有権を主張し、8月15日には国会議員が竹島に上陸した。竹島不法占拠に対する無策は日本海における韓国、北朝鮮、中国の漁船によるカニやイカなどの魚介類の乱獲を黙認することにつながっている。

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中国に対する優柔不断な対応は、ロシア、韓国、北朝鮮などの対日強硬策を誘発しているのだ。

 

まずは、国民に混沌(こんとん)とした国際情勢と日本に迫る危機を伝え、日本国民の見せかけの平和からの覚醒を求めたい。さらに、防衛戦略、外交戦略の正当性に対する諸外国の理解を得るために、安全保障に係る「戦略的情報発信」を行う機能を設置すべきである。特に国家安全保障局において「情報」収集、発信の能力を高め、中国の「輿論(よろん)戦」を超える戦術とすべきだ。海洋国家日本では、都市から離れた海上に係る情報発信が、核兵器並みの力となる。(やまだ よしひこ)

 

筆者:山田吉彦(東海大学教授)

 

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2021年8月31日付産経新聞【正論】を転載しています

 

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