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広がらぬ北京五輪ボイコット論 自民保守系も慎重

Shimpei Okuhara

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来年2月4日に迫った北京冬季五輪の開催をめぐり、欧米諸国で政府使節団の派遣を見送る「外交ボイコット」を求める動きが強まっている。中国当局による香港での民主派弾圧や新疆(しんきょう)ウイグル自治区などでの人権侵害行為が、差別撤廃を掲げる五輪憲章と相いれないためだ。一方、今夏に東京五輪・パラリンピックを敢行した日本の政府・与党では「外交ボイコット」の議論は盛り上がりに欠ける。

 

「(中国の人権状況が改善されない限り)来年の北京冬季五輪に対して、少なくとも『外交ボイコット』を行うということも、議連の集まりとして決議すべきではないか」

 

8月26日、自民党の青山繁晴参院議員は、超党派有志の日本ウイグル国会議員連盟など5つの議連が国会内で開いた会合でこう呼びかけた。会合に出席した在日香港人の民主活動家のウィリアム・リー氏は、青山氏について「(中国当局により)身の安全に危険が及ぶ可能性があった上でそのように発言してもらい、活動し続ける力をもらった」と記者団に語った。

 

1936年にヒトラー率いるナチス・ドイツが主催したベルリン五輪は、ナチス政権の正統性を高め、その後のユダヤ人への差別政策の助長につながったとも指摘される。2008年北京夏季五輪では、招致を決めた01年に中国政府は国内の人権状況の改善を約束したが、香港やウイグル族の人々への迫害は悪化の一途をたどる。

 

こうしたことから、欧州連合(EU)欧州議会は7月、人権状況が改善されない限り政府代表らの招待を断るよう加盟国に求める決議案を採択した。英国下院も同月に同様の決議をまとめている。米国議会でも超党派で、開催地の変更を求める声が拡大している。

 

中国側は「人権問題を利用して中国を中傷し、北京冬季五輪の妨害や破壊を企てている」(外務省報道官)と反発する。

 

日本では青山氏のように中国での五輪開催に疑念を投げかける声は広がらない。

 

加藤勝信官房長官は8月10日の記者会見で、「外交ボイコット」をめぐる対応について「選手団、要人の派遣に関する対応は何ら決まっていない」と述べるにとどめた。自民党の外交部会でも時折、「外交ボイコット」の検討を唱える声もあがるが、本格的な議論は次期衆院選後に先送りされる見通しだ。

 

こうした現状は、6月に閉会した通常国会で中国への非難決議が見送られるなど中国の人権状況に対する危機感が全般的に低いためだと指摘される。ただ、中国の拡張主義に懸念を持つ傾向にある自民党の保守系議員からも声がなかなかあがらない。

 

その理由は、新型コロナウイルス禍で開催した夏の東京五輪・パラリンピックの成功に万全を期したためだ。

 

今年2月に、在日のウイグル人活動家らが北京冬季五輪のボイコットを呼びかける会合を都内で開いた際、ある自民党の保守系ベテラン議員も出席が求められたが、断ったという。

 

この議員は、「ウイグルで起きているジェノサイド(民族大量虐殺)のようなことはやめさせるべきだ。だが、東京五輪を控えた微妙な時期なので、あえて行かなかった」と述べる。中国を刺激することで中国が東京五輪の開催を邪魔しようとしかねないためだという。

 

こうした考えは、日本で暮らす内モンゴル自治区出身者らも理解を示す。中国の弾圧政策に抗議する民族団体「南モンゴルクリルタイ」のチメド・ジャルガル副会長は、産経新聞の取材に「東京五輪にダメージを与えるのが心配で、われわれも北京冬季五輪のボイコットを求める活動は控えている。ただ、民族ジェノサイドを進める中国には五輪開催の資格はない。東京パラリンピック後には日本の政治家にも声をあげてもらいたい」と訴えた。

 

一方、中国側は日本でのボイコット論の高まりに神経をとがらせているようだ。

 

「新型コロナウイルスに苦しむ世界に久しぶりの感動をもたらした」

 

中国の孔鉉佑(こう・げんゆう)駐日大使は7月30日、鳩山由紀夫元首相が名誉顧問を務める日中友好団体が国会内で開いたシンポジウムで、同23日に開会した東京五輪について、こう賛辞を贈った。

 

シンポに現職の議員は出席しなかったが、中国大使が国会内で講演することは極めて珍しい。公安関係者は「東京五輪の開催時期に合わせて、国会内で祝意を表明することで、北京冬季五輪の成功への協力を訴える政治的なメッセージがあるのだろう」と語る。

 

孔氏は自民党の保守系議員を議員会館事務所に訪ね、北京五輪には菅義偉(すが・よしひで)首相ら首脳級の派遣も求めてもいるという。

 

北京冬季五輪開催のあり方をめぐる議論が各国で活発化する中で、日本も意思表明を迫られる。日本が西欧諸国と連動して「ボイコット」を唱えれば、中国は経済的な対抗措置を取りかねない。

 

中国政府は7月の東京五輪の開会式には検討されていた副首相の派遣を見送り、閣僚級で国家体育総局局長の苟仲文氏が出席した。

 

自民党の佐藤正久外交部会長は産経新聞の取材に「中国の習近平国家主席(共産党総書記)にとって北京冬季五輪の成功は、来年秋の党大会で3期目を迎えるのに必須だ。できるだけ多くの首脳に(五輪開会式などに)来てもらいたいだろう」と述べた上で「首脳級が出席しないと中国にとっては『外交ボイコット』されたことと同じレベルになる」と指摘。「相互主義の観点から日本は首脳級を送る必要はない」と強調した。

 

北京冬季五輪後は中国政府は国際社会の圧力を気にせず諸民族への弾圧を強化する恐れがある。自民党の原田義昭元環境相は産経新聞の取材に「選手や政治家も含めて、日本は中国に対し『人権蹂躙(じゅうりん)はやめるべきだ』と声をあげていくべきだ」と語った。

 

筆者:奥原慎平(産経新聞政治部)

 

 

2021年9月3日産経ニュース【政界徒然草】を転載しています

 

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Shimpei Okuhara is a staff writer of The Sankei Shimbun, Political News Department in Tokyo.

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