【美しきにっぽん】夢幻 漆黒照らす燈籠 能登半島・キリコ祭り

 

 

祭りの高揚感が好きだ。

 

夏から秋にかけて、能登半島では「キリコ祭り」が行われる。キリコは担ぎ棒がついた燈籠(とうろう)で、様式は地区によって異なるという。

 

「ヤッサーヤッサー」

 

訪れたのは「宝立七夕キリコまつり」を開催中の石川県珠洲(すず)市宝立(ほうりゅう)町。かけ声のなか、高さ約14メートルの大キリコが練り歩く。夕方になると、笛や太鼓の祭りばやしがにぎやかになり、大キリコ6基と小さな子供用1基が町内を彩る。そして深夜、打ち上げ花火を合図にキリコが海に入ると、祭りは最高潮を迎える。

 

「(キリコが)海に着くまで時間があるし」

 

日が沈み、地元の寺井秀樹さん(71)の自宅にお邪魔して話をきいていると宴席に誘われた。

 

キリコ祭りには、親類や友人、知人を自宅に招き、料理をふるまう「よばれ」という風習がある。寺井さんの家でも家族総出で、招待客をもてなしていた。迷ったが、寺井さんの誘いに、地元の食材をふんだんに使った料理をいただいてから海岸に向かった。

 

 

担ぎ手の動きにあわせてゆらゆらと揺れるキリコの明かりが、漆黒の海面にきらめく。海中でキリコを支えようと苦闘する男たちの姿を、時折上がる花火の光が映し出す。目の前の光景は、勇壮でいながら夢のようにも感じられた。

 

大漁や豊作を願って江戸時代から続いてきた神事だが、現実と無縁ではいられない。宝立町の子供用キリコは、かつて4基を運行していたが、少子化で減り現在の1基になった。

 

過疎化も拍車をかける。「輪島キリコ会館」(輪島市)の竹中正治館長によると「祭り自体は約180カ所で行われていたが、担ぎ手不足でキリコを出せない地域も増えた」という。

 

このため、開催日を週末にする地域も多い。宝立町も毎年8月の7日だった日程を、今年は第一土曜に変更した。少しでも担ぎ手が参加しやすくするためだ。

 

酒店を営む橋元信勝さん(64)は「子供のころ、太鼓の音が聞こえてくるとわくわくした。あの頃の気持ちを残したい」と力を込める。

 

「受け継がれてきた文化を知恵を出し合って守っていければ」。竹中館長の言葉が心に残った。

 

筆者:柿平博文(産経新聞写真報道局)

 

 

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