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米国やフランス、ドイツなどの外交努力と制裁圧力を背景に、ロシアのプーチン政権がウクライナとの国境近くに大規模展開していた軍の一部撤収を発表した。
だが、ウクライナ侵攻の脅威はまだ消えていない。プーチン政権はウクライナを威嚇して自らの要求を通そうという邪心を捨て、軍部隊を即時かつ全面的に引き揚げねばならない。
それまでは米欧も日本も、厳しい対露経済制裁を発動する選択肢を堅持する必要がある。
モスクワで15日、ドイツのショルツ首相との会談後に記者会見したプーチン大統領は、部隊の一部撤収が決まったとしつつも、その規模や詳細は明らかにしなかった。撤収を進めるかどうかは「私たちだけにかかっているのではない」と揺さぶりもかけた。
バイデン米大統領は同日の演説で、ウクライナ周辺の露軍兵力が15万人規模にのぼっていると指摘した。ロシアによる部隊の一部撤収は「確認されていない」とし、ウクライナ侵攻の可能性は「十分に残っている」と述べた。
プーチン政権は昨年12月、軍事的緊張を高めることと並行し、米国と北大西洋条約機構(NATO)に要求を突き付けた。ウクライナなど旧ソ連諸国をNATOに加盟させないことや、「NATO東方拡大」前の1997年の状態に軍備を戻すといったことだ。
バイデン政権はその多くをのめないとする一方、ミサイル配備や軍事演習のあり方については協議すると応じてきた。今後の緊張緩和は米露協議にかかっている部分が多く、注視が必要である。
懸念されるロシアの動きは他にもある。露下院は15日、親露派武装勢力が実効支配するウクライナ東部について、プーチン氏に独立承認を求める決議を採択した。プーチン氏は、ウクライナをNATOに加盟させないための圧力材料として独立承認をちらつかせてくるとみられる。
ウクライナの国家主権を蹂躙(じゅうりん)することは到底許されない。ロシアが親露派を軍事支援し、2014年以降の大規模な東部紛争を招いた経緯を考えれば、独立承認は事実上の侵略行為だ。15年2月の和平合意にも反する。
ロシアが東部の独立を承認した場合にも、日米欧は一致して対露制裁を発動することを明確にしておかなければならない。
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2022年2月17日付産経新聞【主張】を転載しています