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原子力分野での日米連携が一段と緊密化する運びとなった。
萩生田光一経済産業相が米エネルギー省のグランホルム長官とのオンライン会談で、プルトニウムを燃やせる高速炉や次世代原発・小型モジュール炉(SMR)などの国際連携による開発に日本政府として取り組む方針を表明した。
原子力の積極利用は、資源小国の日本にとってエネルギー安全保障上、極めて重要であり、同時に国際的な要請となっている脱炭素化にも資する道である。
高速炉に関してはビル・ゲイツ氏が設立した米国の原子力企業の開発計画に日本原子力研究開発機構と三菱重工業が技術協力する話が具体化している。
日本では原子力機構の「もんじゅ」(電気出力28万キロワット)の開発が進んでいたが、機器の点検不備などで6年前に廃炉が決定されている。しかし、250日に及ぶ運転データが蓄積されており、貴重な知的財産だ。
新たに高速炉計画を進める米国と、国内での高速炉の新規建設が困難な日本の双方に意義のある協力関係が成立する。
高速炉は日本が原子力政策の基本に据える核燃料サイクルの中で主要な役割を担う設備である。フランスとの間で先行していた共同研究は中断状態であり、その遅れを取り戻したい。
非核保有国の日本が原発の使用済み燃料からプルトニウムを回収し、燃料としてリサイクルできるのは、日米原子力協定に支えられてのことである。
この観点からも高速炉開発の日米協力は重要だ。岸田文雄首相は自民党総裁選で核燃料サイクルの重要性を主張している。
高速炉は、原子力発電で発生する高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の減容化や有害度の低減を可能にする。地層処分の負担軽減にも貢献する次世代原発なのだ。
空気に触れると発火する金属ナトリウムを大量に使うため、開発の難度が高いとする消極意見が国内にはあるが、ロシアの高速炉は実用化されているではないか。
SMRに関しては、ポーランドが日本の次世代原発・高温ガス炉に注目している。福島事故から11年を迎える中、世界は原子力に回帰しつつある。岸田氏や萩生田氏らの政府首脳には、この流れをしっかり読み取ってもらいたい。
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2022年1月7日付産経新聞【主張】を転載しています