LEDを使ったライトパフォーマンス
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暗闇に立ち上がった炎が風を切って目の前を通り過ぎる。棒の両端に絡みついた炎は、演者の動きとシンクロしながら、さまざまに形を変えた。闇に含まれる何かを浄化していくかのようだ。
演者は関西を中心に活動するパフォーマンス集団「幻火(げんか)」のメンバーたち。代表の東谷俊之さん(30)が奈良県内の大学でジャグリングサークルに所属していた際に結成。大学を卒業した後、平成26年から本格的に活動をはじめた。今は男女約20人のパフォーマーが所属し、炎やLEDを使った光のパフォーマンスをさまざまなイベントで発表している。
師匠はいない。東谷さんは独学でジャグリングの教本を読み、インターネット上にアップされた海外のパフォーマンスを研究した。やけどは何度もあったが、練習を繰り返し、炎の扱いに慣れるうち、体の動きと輝く炎で人を魅了したいと考えた。
道具を手作りし、パフォーマンス用の燃料も研究。特殊な素材の調合を繰り返した。炎の動きを美しく見せるために、日本舞踊や武道の脚運びも取り入れた。
炎を扱うパフォーマンスは、素材が危険なだけに安全が優先される。最もやっかいな相手は風だ。屋外の場合、風はどこからやってくるか分からない。
「風があちこちから吹くと炎が縦に一気に伸びる。『火が流れる』というのですが、これが怖い」と東谷さん。だが、「そのときは技を変えて対処します」という。パフォーマンスは炎に翻弄されてはならない。「(炎と光の)パフォーマンスは非日常を作ることができる。人をそこに引き込む」と東谷さんは話した。
東大寺の修二会(お水取り)のお松明や薪能の例の通り、炎と暗闇は神聖な儀式や芸能と関わりが深い。暗闇のなかで燃え盛る炎に人は原初的な恐れを呼び起こされ、神秘を感じる。人は繰り返し炎に魅入られてきた。東谷さんも、パフォーマンスを見る人たちも、歴史の長い列に並び、恐れと神秘を味わうのだ。
筆者:恵守乾(産経新聞写真報道局)