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Six Nations naval exercises (JMSDF Twitter)
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日米英など6カ国の艦艇が南シナ海で行っていた共同訓練が10月9日、終了した。2、3日には、沖縄南西の海空域で米英軍の空母3隻が参加する訓練も実施した。これに対し、中国は1日以降、戦闘機など延べ150機を台湾の防空識別圏(ADIZ)に進入させ、威嚇を繰り返した。空母3隻が集結する異例の展開に中国側が激しく反応したとの見方が広がっている。
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今回の訓練には、米軍2隻と英軍1隻の空母計3隻のほか、海上自衛隊からはヘリコプター搭載型護衛艦「いせ」を含む3隻が参加。これにオランダ、カナダ、ニュージーランドのフリゲート艦が加わった。
訓練は4日に沖縄沖から南シナ海に移動し、台湾を取り囲むようにして行われた。南シナ海での訓練に米空母2隻は参加していないが、6カ国が足並みをそろえて中国を牽制(けんせい)する姿を見せたことに防衛省幹部は「画期的だ」と強調した。
日米両国がより多くの国との連携を重視する背景には、米中間の軍事バランスの変化がある。
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1996年には中国軍が台湾・総統選を威嚇するため台湾近海にミサイルを次々と撃ち込んだのに対し、米国は空母2隻を派遣して力の差を見せつけた。あれから25年がたち、中国は空母キラーと称される対艦弾道ミサイル「DF21D」など1250発以上の地上発射型中距離ミサイルを配備。米空母の接近を阻む能力を構築しており、米国は同盟国、友好国を巻き込んで中国を牽制する戦略を描く。
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6カ国共同訓練が行われていた3日には、もう一つの画期的な動きもあった。海自は四国沖で、甲板を耐熱化したヘリ搭載型護衛艦「いずも」に米海兵隊のステルス戦闘機F35Bが発着艦する検証作業を行った。
航空自衛隊のF35B配備は令和6年度から始まる見通しで、「いずも」などへの搭載を視野に入れている。英最新鋭空母「クイーン・エリザベス」もF35Bを搭載しており、政府関係者は日英間でもお互いの空母にF35Bを発着艦させ、補給の効率化などを図りたいと期待を寄せる。
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とはいえ、25年前の台湾海峡危機では中国がミサイル発射をやめたのに対し、今回は台湾ADIZに戦闘機を執拗(しつよう)に進入させている。台湾をめぐる情勢はさらに緊迫化する可能性もあるだけに、日米英など関係国軍のより緊密な連携が必要になる。
筆者:大橋拓史(産経新聞)
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