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韓国発のマンガが日本で読者を増やしている。モノクロ主体の日本マンガと違い、オールカラー。スマートフォンを使い、上から下へ読み進める縦スクロール式が特徴だ。「縦スクロールマンガが世界標準になる」との見方もあり、日本の出版社が参入する動きが起きている。日本が世界に誇るマンガ文化は淘汰されるのか。
隙間ですらすら
「マンガ好きのみならず、スマートフォンでコンテンツを楽しむ層に幅広くアピールし、マンガを楽しむきっかけ作りや習慣化に成功した」と、電子コミック配信サービス「ピッコマ」の広報担当者。
ピッコマは、韓国IT大手の日本法人「カカオジャパン」(東京)が運営。韓国作品を日本向けにローカライズした縦スクマンガ『俺だけレベルアップな件』が昨年5月に月間販売金額2億円を突破し、出版界の注目を集めた。
ピッコマの年間累計販売金額は令和元年の約134億円から同2年の約376億円に急増。配信作品に占める縦スクの割合は、作品数こそ約1・4%だが売り上げでは約50%を占める。
韓国発の縦スクは、世界的なサービス名にちなんで「ウェブトゥーン」とも呼ばれる。雑誌を意識した日本マンガが見開きページのコマ割りで複数場面を表現するのに対し、縦スクはコマ割りがほとんどない。一つの場面ごとにスクロールし、すらすら読めるので、待ち時間など隙間の時間で手軽に楽しめる。
アプリも韓国系が2強
出版科学研究所によると、昨年の国内コミック市場の規模は紙と電子を合わせ推定販売金額6126億円で過去最大。特に電子コミックは前年比31・9%増の3420億円と伸びが大きく、『鬼滅の刃』などのヒット作と新型コロナウイルス感染拡大に伴う巣ごもりにより新規ユーザーが拡大したという。
電子コミック市場が急拡大した中、縦スクの大ヒット作も生まれている。韓国原作のラブコメディー『女神降臨』を日本で配信する「LINEマンガ」の広報によると、同作の閲覧数は累計5・8億回、世界では同51億回を記録した。
データ分析の「ヴァリューズ」(東京)によると、国内のマンガアプリのユーザー数は昨年3月から急増。特にLINEマンガとピッコマは、それぞれ推定約640万人と約550万人で雑誌系の「マガポケ」などを引き離した。
「LINEマンガの母体であるネイバー(韓国)とピッコマの母体であるカカオエンターテインメント(同)は、世界戦略として縦読みの作品数を大幅に増やしている」とヴァリューズのマーケティングコンサルタント、竹久真也さん。縦スクの特性を「国による読み進め方の差異がなく、翻訳だけで各国ローカライズができる」と指摘する。
世界を制するのは
LINEマンガやピッコマによると、日本の出版社や作家から縦スクに関する問い合わせが増え、参入の動きもあるという。世界市場を見据える縦スクに、モノクロで右上からコマを読み進める日本マンガは淘汰されるのか。
「縦スクロールとフルカラーは世界標準化されつつある。このままでは、日本のマンガの良さが世界に伝わらないまま、産業として縮小してしまう」と警鐘を鳴らすのは縦スクを制作する「コルク」(東京)の執行役員、長谷川寛さんだ。
「マンガも含め、ながら見するコンテンツの市場は非常に大きい。ただ、心に残るものはあまりない。読み応えのある縦スクを制作すれば、世界市場を制することが可能ではないか。かたちは変わってもマンガ文化は失われない」と話す。
一方、電子コミック配信サービス「まんが王国」を中核とする「ビーグリー」(東京)の吉田仁平社長は、モノクロでコマ割りがあっても世界市場へ打って出ることができるとみる。
「1ページの情報量が多く、コマ割りにも工夫の余地がある日本マンガの方が表現の幅は広い」と評価。その上で「世界をリードするには、コンテンツがグローバルに市場を構築できるかどうかが重要だ。海外展開はプラットフォーマー(配信サービス)であるわれわれの使命だ」とする。
多様なコンテンツがスマホ上でユーザーの時間を奪い合う。世界規模の競争に日本のマンガもさらされているといえそうだ。
筆者:寺田理恵(産経新聞)