【主張】習政権の台湾白書 国際社会は危機意識持て
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中国の習近平政権が22年ぶりとなる台湾白書を発表した。
台湾統一の方針を示した白書で、習政権は台湾独立勢力や外国勢力の「挑発」に対し、武力行使も辞さない強硬姿勢を改めて示した。
台湾周辺で行った一連の軍事演習に続き、台湾の蔡英文政権への圧力を一段と強めたものだ。
軍事、外交両面で恫喝(どうかつ)するのは習政権の常套(じょうとう)手段だ。台湾や国際社会は中国の脅しに屈してはならない。
中国国務院(政府)台湾事務弁公室などが10日に発表した台湾白書「台湾問題と新時代の中国統一事業」は、「最大の誠意と努力をもって平和統一を勝ち取りたい」としながらも、「武力行使の放棄は約束しない」と強調した。
この方針は2019年1月に習国家主席が行った台湾問題に関する演説でも触れている。
看過できないのは、統一後の台湾の扱いをめぐって、1993年と2000年の過去2回の白書にあった「軍隊や行政官を台湾に派遣することはない」との文言が、今回の白書で消えたことだ。
白書には「一国二制度は台湾問題解決の基本方針だ」との記述はある。だが、軍隊や行政官を派遣するようでは併吞(へいどん)そのものではないか。台湾を威嚇する習政権の動向には一層の警戒が必要だ。
台湾で対中政策を主管する大陸委員会は、台湾白書について「台湾海峡と地域の平和を破壊する傲慢な思考をあらわにした」と非難した。当然である。
習政権は、ペロシ米下院議長の台湾訪問を利用して台湾周辺で軍事演習を強行した。航空機と艦船による台湾海峡の中間線越えを常態化しようとしている。弾道ミサイル5発を日本の排他的経済水域(EEZ)内に着弾させたが、これは、日本や在日米軍への威嚇である。秋の中国共産党大会に向けて準備した白書は、台湾のみならず、台湾を支える日米や国際社会にも向けられたものだ。
国際社会は危機意識を持ち、警戒を緩めてはならない。
秋葉剛男国家安全保障局長は17日、中国・天津で同国の外交トップ、楊潔篪(よう・けつち)共産党政治局員と7時間にわたり会談した。岸田文雄政権は中国の非を鳴らし続けなければならない。9月の日中国交正常化50年を顧慮してはならず、記念行事は直ちに中止すべきだ。
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2022年8月19日付産経新聞【主張】を転載しています
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