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【主張】カンヌ同時受賞 日本を盛り上げる快挙だ

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映画「パーフェクトデイズ」より。左はカンヌ国際映画祭で男優賞を受賞した役所広司さん

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世界最高峰の映画祭の一つ、フランスのカンヌ国際映画祭で日本の2作品が男優賞と脚本賞に輝いた。主要賞を同時受賞するのは初めてで、邦画のレベルの高さを示す快挙だ。日本映画界のさらなる隆盛につなげることを期待したい。

 

カンヌ国際映画祭で男優賞を獲得した映画「パーフェクトデイズ」の役所広司さん(右)と坂元裕二さんが脚本賞を獲得した映画「怪物」の是枝裕和監督(中央)=5月27日、フランス・カンヌ(ゲッティ=共同)

 

男優賞を射止めたのは、東京を舞台にした「パーフェクトデイズ」(ヴィム・ヴェンダース監督)主演の役所広司さんである。日本の俳優としては、2004年の「誰も知らない」(是枝裕和監督)で、当時14歳の最年少で受賞した柳(やぎ)楽(ら)優弥さん以来2人目、19年ぶりだ。

 

役所さんは1997年に同映画祭の最高賞を受賞した「うなぎ」(今村昌平監督)で主演するなど海外での知名度も高く、現代日本を代表する俳優の一人だ。今回演じたのは影のある寡黙な公共トイレの清掃員で、せりふがほとんどない難役を魅力たっぷりに演じた。辛口で有名な仏紙も「磁石のように人を引き付ける」と高く評価した。

 

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一方、脚本賞を受賞したのは「怪物」(是枝監督)の坂元裕二さんだ。一昨年の「ドライブ・マイ・カー」の濱口竜介監督と大江崇允(たかまさ)さん以来2度目である。

 

坂元さんは「東京ラブストーリー」などトレンディードラマの旗手で、テレビ業界の第一線で活躍してきた人気脚本家である。最近では社会派ドラマも手掛け、「Mother」で橋田賞を受賞している。

 

カンヌ国際映画祭で「怪物」の公式上映後、客席に手を振る是枝裕和監督(上)と坂元裕二さん。坂元さんは脚本賞を受賞した=5月27日、フランス・カンヌ(共同)

 

両者の栄誉は、日本の映画界の実力を世界が評価した結果といえるだろう。またその背後にわが国が誇る巨匠たちの存在を感じさせるのも興味深い。

 

ドイツ出身のヴェンダース監督は小津安二郎監督を師と仰ぐ親日家で、昨年、第33回高松宮殿下記念世界文化賞(演劇・映像部門)を受賞した。今作品では日本の社会の片隅で生きる男の質素な日常とささやかな喜びを描いた。

 

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ヴィム・ヴェンダース監督(左)と写真に納まる役所広司さん。第76回カンヌ国際映画祭で男優賞を受賞した=5月27日、フランス・カンヌ(AP=共同)

 

仏メディアが黒澤明監督の「羅生門」に由来する手法であると指摘したのが坂元さんの手掛けた「怪物」だ。学校で起きた出来事を母親や教師、子供らそれぞれの立場から描き、その見え方が異なるという構成である。

 

日本で実績を重ねた俳優と脚本家が世界を舞台に実力を示した。最近ではスポーツ界の話題が多いが、映画でも日本全体を盛り上げてくれる快事である。

 

 

2023年5月30日付産経新聞【主張】を転載しています

 

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