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【主張】IAEA報告書 首相は処理水の決断急げ

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福島処理水報告書を岸田文雄首相に提出するグロッシIAEA事務局長(左)=7月4日午後、首相官邸(矢島康弘撮影)

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国際原子力機関(IAEA)のグロッシ事務局長が来日し、東京電力福島第1原子力発電所で準備が進む処理水の海洋放出計画の安全性などを評価した包括報告書を岸田文雄首相に手渡した。

 

報告書は計画に問題点はなく、科学的観点から妥当であることを認めている。世界の原子力の平和利用をつかさどるIAEAの見解であるだけに、わが国にとって心強い内容だ。

 

岸田氏には今夏の放出に向けて準備を急ぐことを求めたい。風評を危惧しての逡巡は、国内外の有害な風評を深めるだけである。

 

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処理水中にそのまま残る放射性物質は、水の形で存在するトリチウム(三重水素)だけだ。多核種除去設備(ALPS)でも浄化できないが、その放射線は極めて弱く、生物の体からも速やかに排出される。このトリチウム水を含む水を海水で大幅に薄めて太平洋に流すのが海洋放出計画だ。

 

廃炉・汚染水・処理水対策福島評議会に出席し、IAEAの取り組みについて話すグロッシ事務局長(左)=5日午前、福島県いわき市(共同)

 

処理水は大型タンクに千基以上の量だが、正味のトリチウム水は全体で大さじ1杯分に過ぎない点も知っておきたいことである。

 

令和3年4月に海洋放出の基本方針を固めた政府は、安全性と透明性が保たれた形での実施となるよう、IAEAによる客観的な評価を依頼していた。

 

今回の包括報告書に加え、グロッシ氏は7月5日に福島第1原発を訪れIAEAの事務所を開設した。放出水の観測継続が目的だ。

 

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原発敷地内のタンク群は満杯に近い。処理水の放出計画の遅れは、廃炉工程と地元の復興の遅延に直結する。そうした事態を回避できるタイミングに包括報告書を間に合わせてくれたグロッシ氏に感謝したい。

 

ところが、である。この重要な局面で与党である公明党の山口那津男代表から啞然とするコメントがあった。海洋放出について「直近に迫った海水浴シーズンは避けた方がよい」と発言したのだ。

 

処理水タンクを視察するIAEA調査団=2023年6月2日、東京電力福島第1原発(東京電力提供)

 

福島復興の最大の敵は風評被害である。その風評を助長するメッセージであることに気付かなかったとしたらセンスが問われる。山口氏は釈明したが後の祭りだ。科学を無視して、海洋放出が危険であると主張する中国や韓国の野党が勢いづくだけだ。

 

IAEAの報告書を受領した岸田氏は、地元漁業者らとの話し合いを通じて処理水放出への扉を開かなければならない。

 

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2023年7月5日付産経新聞【主張】を転載しています

 

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