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自衛隊明記の闘いから逃げてはならない

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航空観閲式後、部隊を視察する岸田文雄首相(中央)=11月11日午後、埼玉県の航空自衛隊入間基地(岩崎叶汰撮影)

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岸田文雄首相は、自身の任期内に憲法改正を実現すると繰り返し公言している。首相の自民党総裁としての任期は来年9月までだ。それまでに衆参両院の3分の2の賛成で憲法改正発議案を通し、国民投票を実施して過半数を得なければならない。残された時間は限られている。具体的にどの条文を改正するのか確定させるべき時が来ている。

 

自民党は、①自衛隊の存在の明記②緊急事態対応の強化③参院の合区解消④教育の充実―の4項目の改正案を提示している。岸田首相は最初の憲法改正発議に何を盛り込むのか明言しておらず、一部には与野党の議論が進展している緊急事態対応を先にすべきだという意見もある。それには賛成できない。自衛隊明記を絶対に外してはならない。

 

ヘリコプターの飛行などが披露された「エアーフェスタYAO2023」=10月29日、八尾市の陸上自衛隊八尾駐屯地(西川博明撮影)

 

世界規模の戦争危機を直視せよ

 

国際社会の平和に責任を持つ国連安保理常任理事国ロシアがウクライナへの侵略戦争を起こし、テロ集団の残虐な奇襲攻撃に対してイスラエルが自衛権を行使している。中国共産党政権による台湾への武力行使もいつあってもおかしくない。台湾有事はわが国の有事であるから、現行憲法下で最初の防衛出動、すなわち自衛隊による武力行使が近くあり得るのだ。当然、戦死者も出るだろう。このような、世界規模の戦争危機の中で、わが国憲法ではいまだに「陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない」(9条2項)という否定文だけが書かれ、自衛隊について一言も触れていない。

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引き渡され出港する海上自衛隊の最新鋭潜水艦「はくげい」=3月20日、神戸市中央区の川崎重工業神戸工場(彦野公太朗撮影)

 

平成29年、安倍晋三首相は、戦力不保持条文はそのままにして自衛隊を明記する条文を加える案を提起した。当時、自民党や保守系の民間運動体の中には、集団的自衛権の限定的容認をめぐる激しい反対の影響もあって、最初の憲法改正発議では緊急事態対応を優先すべきだという議論があった。安倍氏の提案はそれに対する反論であり、連立与党の公明党が「加憲」、すなわち現行条文は変えずに必要な条文を加えるよう提唱していたことを前提にして、まず、自衛隊員の名誉を守ろうとする意図から自衛隊の明記を提唱したのだった。それが実現した後、当然、9条2項を改正して国軍保持を明記することも視野に入れていた。

 

陸自ヘリが行方不明となった、沖縄県・宮古島沖の海域を捜索する自衛隊員=4月10日午後(共同)

 

命懸けの隊員に名誉を

 

自衛隊員は「事に臨んでは危険を顧みず、身をもつて責務の完遂に務め、もつて国民の負託にこたえることを誓います」という宣誓をしている。命懸けの仕事をする自衛隊員に報いる道は、名誉を付与することだ。最初の憲法改正発議において、自衛隊を憲法に明記することを避けながら、命を懸けて国のために働けと今後も命令するのであれば、あまりに自衛隊員に失礼ではないか。隊員に名誉を与えるため、政治家も我々民間も、自衛隊の存在を憲法に明記するための闘いから逃げてはならない。

 

筆者:西岡力(国基研企画委員兼研究員・麗澤大学特任教授)

 

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国家基本問題研究所(JINF)「今週の直言」第1091回(2023年11月13日)を転載しています

 

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