【主張】周庭氏の指名手配 自由への脅迫は許されぬ
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日本語が堪能な香港の民主活動家として知られ、カナダに事実上亡命していた周庭(アグネス・チョウ)氏(27)が香港警察に指名手配された。
自由を求めてカナダにとどまり、香港に戻らないことを決めた周氏への報復である。
今後、周氏の安全が脅かされることがないよう国際社会は中国と香港政府への監視を強めなければならない。
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ビクトリアピークから見た香港全景(岩川晋也撮影)
周氏は2020年8月に香港国家安全維持法(国安法)違反の容疑で逮捕された。その後、保釈されたが、条件として警察に定期的に出頭する義務などを課せられていた。昨年9月、留学のためカナダに渡航した周氏は出頭日の12月28日、香港に戻らなかった。「香港に戻れば二度と出られなくなるかもしれない」という恐れからだった。
そんな周氏に、香港警察は指名手配を強行し「自首しなければ一生追われることになる」と脅迫した。「自由に生きたい」という周氏の基本的人権を踏みにじるその言動は、背後で香港政府を操る中国共産党政権の本性をあらわにしている。
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記者会見する香港政府トップの李家超行政長官(中央)ら。早期制定を目指す「国家安全条例」の要旨を公表した=1月30日、香港(香港政府提供・共同)
国際社会は一致協力して、国安法によって抑圧された周氏ら香港人の自由と人権を守るために行動すべきだ。
そもそも周氏への弾圧に正当性を見いだすことができない。周氏は一体どんな罪を犯したというのか。逮捕から3年半が経過しているが、具体的な容疑さえ明らかにされていない。
折しも中国・北京の裁判所では、起訴理由が公にされないままスパイ容疑で拘束されていた中国出身のオーストラリア人作家に執行猶予付きの死刑判決が下されたばかりである。
周氏らへの弾圧が浮き彫りにしているのは、中国共産党の強権政治と、香港で加速する「中国化」という現実だ。香港に自由を保障していた「一国二制度」の崩壊である。
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オンラインで取材に応じる周庭氏=12月4日(ロイター)
14年の香港民主化運動「雨傘運動」以降、香港の「民主の女神」と称されてきた周氏の国際的知名度は高い。今後、カナダをはじめ米欧諸国で当局への批判が高まっていくだろう。
来日経験があり日本とのかかわりも少なくない周氏の動向に多くの日本人も関心を寄せている。強硬姿勢を弱めようとしない中国・香港政府に対し、日本政府も抗議声明を出すなど毅然(きぜん)とした対応をとるべきだ。
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2024年2月9日付産経新聞【主張】を転載しています
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