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尖閣防衛、攻めに転じよ

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2月23日、米国防総省はカービー報道官が法改正された中国海警局の動きについて問われ、「尖閣諸島(沖縄県石垣市)に関して日本の主権を支持する」と語り、注目された。しかし、26日、右発言は「エラー」だったと本人が訂正した。

 

領土も主権も当事国が自力で守るのが原則だ。しかし、尖閣諸島防衛について日本の米国頼りは際立つ。米国側が日米安全保障条約第5条適用に言及すれば日本は政府もメディアも国民も安心する。米国の言葉に一喜一憂する日本の姿は恥ずかしい。菅義偉首相らわが国の為政者は、もういいかげん、米国の5条適用発言に謝辞を送るのをやめてはどうか。その代わりに国民に日本国と日本国民の姿がいかに異常であるかを説き、人々の覚醒を促すべきだろう。

 

2月25日、政府は中国海警局の船が尖閣諸島に接近・上陸を試みた場合、重大凶悪犯罪とみなして危害を加える「危害射撃」が可能とし、即時適用可能だと説明した。

 

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これまではわが国の接続水域や領海に侵入する中国海警局の船に、まず警告し、退去を要求し、従わない場合は船をぶつけて進路変更を強制する接舷規制を行い、突破されたときには乗組員に危害を与えない船体射撃を行うことになっていた。今回の政府説明は、これからはもっと毅然と対応できるという印象を与えるが、危害射撃は現行法で可能なことなのだ。

 

「できるということを、今回、初めて発表したということです」と自民党の佐藤正久外交部会長が語った。

 

これまでもできることだったが発表していなかったのだ。何もできない、してはならない、軍事的手段には訴えたくない、軍事から遠ざかっていたいという気概なき平和主義の典型だ。政府はせっかく、初めて危害射撃も可能だと発表したが、こんなことは全く、対中抑止にならない。

 

中国は尖閣を取りに来ているのだ。危害射撃を含めて海上保安庁の抵抗は織り込み済みだ。だからこそ、海警は人民解放軍の指揮下で海軍の一翼として海からも空からも、全力で攻撃するよう、法改正された。

 

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コーストガードの振りをしながら、完全な軍隊として軍事行動を取るために構えた中国にわが国は、事実上、何の備えもしていない。危害射撃が可能だと公表しても、海保は従来と同じく憲法と法律で警察官職務執行法の範囲に閉じ込められ、手足を固く縛られたままだ。海上自衛隊も同様で中国側の軍事攻勢には対応できない。尖閣諸島は守れない公算が大きい。

 

この最悪の事態回避のため、自民党では領域警備法設置などが議論されているが、首相官邸の反応は非常に鈍い。菅首相は国土が奪われようとしている戦後最大のこの危機を察知しているのか。

 

国の安全をはかる大戦略を論ずる国家安全保障会議(NSC)は、菅政権発足後の5カ月間で11回開催された。会議は最長で34分だった。短い場合は8分、7分(2回)、6分のときもあった。この開催記録からは、日本国の最高司令官である菅首相が現下の状況を深刻にとらえている様子は伝わってこない。

 

日本も世界もいま直面する最重要課題は中国の脅威だ。そこから生まれる国防、安全保障の問題だ。首相主導で日本国の安全保障を確かなものにせずして、わが国は持たない。新型コロナウイルス対策もワクチン供給も非常に大事だ。しかし、国があっての全てであろう。

 

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中国は1969年以来50年間、今日があるのを見越して尖閣諸島の領有権を主張してきた。他方わが国政府は尖閣諸島の守りについて何もしてこなかったと言ってよい。南西諸島に小規模の自衛隊は駐屯させた。しかしおよそ不十分で、国家の安全をこんなゆるい構えで守れると思うのは楽観的すぎる。

 

本来、政府は国民にわが国の尖閣諸島の現状を公開して危機的状況に気づかせなければならない。米国ゆえに尖閣も安心だと国民が夢見ていれば、覚醒させなければならない。状況悪化に対処できるよう、現状を改めなければならない。その旗を振るのが政府、政治の役割だ。にもかかわらず、菅政権は安全保障に関心が薄いという印象を与えていないか。誤解されるようなことは国益に反する。重大な問題としての認識が必要であろう。

 

米国のバイデン政権の行方を注視しながらいまこそ、わが国は積極攻勢に出るべきときだろう。中国はポストコロナでワクチン外交を展開する。見返りに通信機器大手のファーウェイのシステムを導入させて、未来永劫中国の支配下に置こうというたくらみだ。「債務のわな」戦術も継続中だ。内政不干渉で独裁政権を味方に引き入れ、勢力膨張をはかり、半導体製造もサプライチェーンも中国中心の構築を急いでいる。軍事力の巨大化は言うまでもない。

 

この中国を日本は国際連携を強めることで抑制できる。英国は日米豪印4カ国の枠組みQUADおよび環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)に強い関心を示している。英仏独はインド・太平洋でも南シナ海でも連携を希望している。ここに多国間外交をうたうバイデン政権の積極的参加を求め、日本が汗をかいて努力してその背中を押すときだ。

 

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わが国の年来の受け身外交では眼前の安全保障の危機は乗り越えられない。あらゆる意味でわが国は攻めの姿勢に転ずる必要がある。憲法改正を含めて、国家としての自立体制確立を原点とし、前向きの攻めの姿勢をとるときだ。菅首相よ、そのことを国民に語りかけよ。他国に頼りきりの国家の在り方の異常を、国民に向かって説け。

 

筆者:櫻井よしこ

 

 

2021年3月1日付産経新聞【美しき勁き国へ】を転載しています

 

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