【主張】電力逼迫警報 再生エネの脆弱性克服を
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経済産業省は電力不足の恐れがあるとして、東京電力と東北電力管内に「電力需給逼(ひっ)迫(ぱく)警報」を発令し、企業や家庭に節電を強く呼び掛けた。
福島県沖で16日夜に発生した地震で沿岸の火力発電所が被災し電力の供給力が大きく低下した。加えて急激に寒さが戻ったことで暖房需要が急増し、電力の需給が急激に逼迫する事態となった。
発電所の復旧には時間がかかる見通しだ。全国規模での円滑な電力融通に加え、企業や家庭もできるだけ節電に協力したい。
慢性的な電力不足には警戒が必要だ。とくに東電では供給力の低下が目立ち、毎冬に電力需給は綱渡りの状況にある。これを節電だけで乗り切るのは無理がある。
このため官民で安定的な電源を確保し、電力の供給力を増強する取り組みが不可欠である。
逼迫警報は、関東で計画停電が実施された東日本大震災後に導入された。電力供給の余力を示す供給予備率が3%を下回る恐れがある場合に発令される。警報が実際に発令されたのは初めてだ。
電力需要が供給を上回ると周波数が乱高下し、発電所が一斉に停止して大規模停電(ブラックアウト)に陥る恐れがある。
そうした事態を避けるため、経産省は警報を出して節電を呼び掛けた。必要に応じ、大口顧客向けの電力供給を削減する電力使用制限令なども検討すべきだ。
ただ、急な警報発令には疑問も残る。東電は18日夜にも電力需給が逼迫するとして節電を求めている。今回の警報発令は21日夜と突然だったため、大規模工場などでは操業を休止する準備ができなかった。もっと早く警報を出す体制を整える必要があった。
経産省では、すでに昨年から今冬の電力需給の逼迫を予想していた。脱炭素に向けて太陽光など再生可能エネルギーの導入が進む一方で、電力自由化で老朽化した石油や石炭などの火力発電所が相次いで廃止されているからだ。
冬場の悪天候時には太陽光は稼働せず、暖房需要は増加する。昨年1月には関西圏でも電力需給が逼迫した。とくに原発が稼働していない東日本地域では、電力不足が常態化しつつある。
政府・与党は、こうした電力不足を厳しく認識し、安全性を確認した原発の早期再稼働を主導すべきである。
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2022年3月23日付産経新聞【主張】を転載しています
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