桜が色づく仕組み解明 青と赤の光でピンクに

 

日本の春を美しく彩る桜。その代表的な品種である「ソメイヨシノ」の花がピンクに色づく仕組みを、弘前大などの研究チームが解明した。鍵を握っていたのは、つぼみを照らす青と赤の光だ。この成果を活用することで、色づきのいい花を自在に咲かせられる可能性が出てきたという。

 

 

お花見といえばソメイヨシノ

 

ソメイヨシノは、エドヒガンとオオシマザクラの仲間の交配で生まれた日本産の品種だ。江戸時代の末期、江戸の染井(現在の東京都豊島区駒込)の植木屋が、昔から桜の名所として知られていた奈良県の吉野山にちなんで「吉野桜」の名で全国に売り出した。

 

その後、吉野山の桜と区別するため、産地名を冠したソメイヨシノに名が改められたといわれる。昭和の高度経済成長期に全国で植樹が進み、今ではお花見といえばソメイヨシノがすぐに思い浮かぶほど、日本人に親しまれている。

 

ソメイヨシノは成長が非常に早く、20年程度で木の横の広がりが20メートルを超える。また、葉が出る前に花が密集して木を埋め尽くすように咲き花見に適している。そのため、各地に数多くの名所がある。青森県弘前市の弘前公園もその一つで、毎年ゴールデンウイークごろに「弘前さくらまつり」が開かれ、200万人以上の観光客が訪れる。

 

 

LEDでさまざまな光を照射

 

園内にはソメイヨシノが約1700本植えられ、手入れのために通年、枝の剪定(せんてい)が行われている。同市では、冬場に切った枝のうち、小さなつぼみがついているものを希望者に配布。もらった人は室内で花瓶に入れるなどして育て、花を咲かせて楽しんでいる。ただ、屋外の公園でピンク色に美しく染まって咲いた花に比べると、色はかなり白っぽいという。

 

野外と室内で花の色が変わるのは、いったいどうしてなのか。弘前大の荒川修教授(果樹園芸学)は、リンゴの実が紫外線の効果で赤くなることをヒントに、ソメイヨシノの色づきも光と関係があるのではないかと推測。弘前公園で冬場に剪定された小さなつぼみのある枝を利用して、実験を開始した。

 

発光ダイオード(LED)を使い、開き始めのつぼみにさまざまな色の光を照射。すると、青い光を当てた花びらはうっすらとピンクに色づいた。さらに赤い光を同時に当てると、色はさらに濃くなった。ただし、赤い光を当てただけではほとんど変化がなかった。

 

 

花びらの色づきを自在に調節

 

ソメイヨシノの花びらには、青や赤の光を受けると活性化する受容体という分子があり、実験では、青い光の受容体が働いてアントシアニンという色素を生成していた。その働きを赤い光の受容体が強め、花びらをピンク色に染めていた。

 

青や赤の光は、太陽光には豊富に含まれるが、室内の照明に使われている蛍光灯には少ない。そのため荒川教授は、ソメイヨシノの色づきには青と赤両方の光が必要で、これらが少ない室内で育てると、花びらが色づかず白くなると結論づけた。

 

今後は、ソメイヨシノの遺伝子を解析し、青や赤の光が花の色に影響を与える仕組みについての詳細な解明を目指す。荒川教授は「室内でもきれいなピンクの桜を自在に育てられる方法を確立できそうだ。他の桜品種の色づきも調節できるかもしれない」と話す。

 

弘前公園を管理する同市公園緑地課でも「屋外だけでなく、ソメイヨシノの新たな展示方法が開拓できるのではないか」と期待を寄せている。

 

筆者:伊藤壽一郎(産経新聞科学部)

 

 

この記事の英文記事を読む

 

 

Author:

Juichiro Ito is a staff writer of the Sankei Shimbun Science Department at Tokyo HQ office.

Leave a Reply