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【主張】独首相の中国訪問 西側の結束を乱す接近だ

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Olaf Scholz
訪中したドイツのショルツ首相(左)と習近平国家主席=11月4日、北京(ロイター)

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民主主義諸国の結束を揺るがしかねない訪中だったと憂慮せざるを得ない。ドイツのショルツ首相が北京を訪れ、習近平国家主席らと会談したことだ。両首脳は経済協力拡大などで合意した。

 

新型コロナウイルス禍が始まって以来、先進7カ国(G7)首脳の訪中は初めてである。しかも習氏が3期目に入り、独裁体制を確立した直後の北京詣でだ。ショルツ氏が習氏の強権を容認したとみられる危うさをはらむ。

 

Olaf Scholz

訪中したドイツのショルツ首相(左)と李克強首相=11月4日、北京(AP)

 

会談自体は否定しないが、時と場所を選ぶべきだった。習氏はショルツ氏を大歓迎した。G7諸国の一角を切り崩そうとする狙いは明白だろう。ショルツ氏はこれにやすやすと乗るつもりなのか。

 

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ドイツには、中国の覇権主義的な振る舞いを阻む対中戦略を展開する責務があるはずだ。その点を十分に踏まえるよう、日米欧は強く迫らなくてはならない。

 

ショルツ氏は記者会見で、台湾の武力統一が望ましくないという考えや、新疆ウイグル自治区など少数民族の人権問題への懸念を中国側に伝えたと説明した。だが、欧州でも重視されるインド太平洋地域の平和と安定など、中国に起因する安全保障上の懸案を十分に議論した形跡がみえないのはどうしたことか。

 

ショルツ氏の訪中には、自動車大手フォルクスワーゲンなど十数社の独企業幹部が同行した。これでは、中国の巨大な経済力に引き寄せられたと受け止められても仕方あるまい。

 

訪中直前には、中国の国有企業がドイツ最大の貿易港である北部ハンブルク港のターミナルに出資する計画が容認された。各国が経済安全保障の観点から対中関係を見直す中でドイツが中国に接近すれば、軍事転用可能な先端技術の流出などを阻もうとする対中包囲網に風穴が開きかねない。ドイツはこうした懸念を脇に置き、自国のみが潤えばいいというのか。

 

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6月26日、ドイツ南部エルマウで、会議の席に着いたG7と欧州連合(EU)の首脳(AP)

 

さらに分かりにくいのは、ドイツが戦闘機部隊を日本に派遣して共同訓練を行うなど、インド太平洋地域への関与を強めていることとの整合性だ。日独外務・防衛閣僚会合(2プラス2)でも中国などを念頭に「防衛協力の深化」が確認されたばかりである。そうした中での対中接近は矛盾する。ドイツは今年のG7議長国でもある。中国を抑止する立場をもっと明確にしてもらいたい。

 

 

2022年11月8日付産経新聞【主張】を転載しています

 

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