「徴用工」訴訟の解決に向けた官民協議体の初会合を前に、
記者団の取材に応じる原告代理人弁護士ら
=7月4日、韓国外務省庁舎前(時吉達也撮影)
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韓国の最高裁が日本企業に賠償を命じたいわゆる徴用工訴訟で、韓国政府の関係者や専門家らが解決策を話し合う官民共同の協議会が設立され、初会合が開かれた。
日韓関係の改善を重視する尹錫悦政権が両国間の懸案となっている「徴用工」訴訟の解決に向けて動き出した格好だが、浮上した案は、いずれも解決策にはほど遠い。
韓国側は8月までに意見聴取を終えて日本側との協議に臨むとしているが、両国の賠償問題は「1965年の日韓請求権協定で個人補償を含め解決済み」との日本の立場は変わらない。尹政権は、あくまで韓国国内の問題として完結させるべきである。
韓国での報道などによると、解決策の一つとして、被告となった日本企業を含まない他の日韓の企業や個人が自発的に出資して約300億ウォン(約31億円)規模の基金を設立し、原告への賠償金に充てる案が検討されている。
また、韓国政府が賠償金を肩代わりし、将来的に日本側に支払いを求める形式の「代位弁済」案も浮上しているという。
これらの案に原告側は「加害者に免罪符を与える」と反発し、日本企業が裁判外の協議で和解金を支払うことを求めている。
だが、この問題の責任が韓国司法の暴走と当時の政権の無策にあることは明白だ。韓国最高裁は2018年、国家間の約束である日韓請求権協定を一方的に反故(ほご)にし日本企業に賠償を命じるという国際法に反する常識外の判断を下した。文在寅前政権は「司法の独立」を理由に問題を放置した。
原告側は日本企業の資産を差し押さえ、売却で現金化する手続きを進めている。韓国最高裁で資産売却命令が確定し、現金化されれば日本は制裁措置を辞さない構えだ。当然である。
尹政権にとってこの問題の解決は、韓国が民主主義や法の支配の価値を共有する国際社会の一員であることを示し、文政権との違いを強調する大きな機会となる。
尹氏は韓国大統領として初めて北大西洋条約機構(NATO)首脳会議に参加した。韓国政府高官は「韓国が自由民主主義と人権、法治主義を守る先頭に積極的に立つと明らかにするため」とその理由を説明した。それならまず、国際常識が通用する国であることを内外に示すべきだろう。
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2022年7月8日付産経新聞【主張】を転載しています