奪還した東部ハリコフ州の要衝イジュムに入り
軍司令官(左)と話すウクライナのゼレンスキー大統領
=9月14日(ウクライナ大統領府提供・ロイター)
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ロシアの侵略を受けるウクライナの反攻が進捗(しんちょく)をみせている。
ウクライナ軍は東部ハリコフ州の要衝イジュムを奪還し、州のほぼ全域を解放した。3月末に首都キーウ(キエフ)近郊から露軍を撤退させたのに続く重要な成果だ。
露西部に隣接するハリコフ州は2月24日の侵攻以降、一貫して猛攻にさらされた。多くの地域が占領され、州都ハリコフは日々の攻撃に耐えながら持ちこたえてきた。
9月に入り、ウクライナ軍が反攻をかけた。
ウクライナは8月、南部を奪還する意図を強調していた。兵員の枯渇に直面する露軍は、南部に戦力を振り向けた。そこを突き、ウクライナ軍は一気にハリコフ州で攻めた。
米高機動ロケット砲システム「ハイマース」をはじめ、米欧が供与する高精度兵器が威力を発揮している。ウクライナ軍は露軍の補給拠点を効率的にたたき、露部隊を次々と敗走させた。
侵攻から半年以上が過ぎてもウクライナの士気は衰えていない。戦いを根本で支えているのは、侵略とロシアの支配を絶対に許さないという国民の強い意志だ。
「仮に領土が一時的に占領されても、ウクライナ人が征服されることはない」。イジュムを訪れたゼレンスキー大統領の言葉が国民の思いを代弁していよう。
国際社会が経済制裁によってロシアに圧力をかけ続けることはむろん重要だ。だが、「力」を信奉するプーチン露大統領に最も効くのは、侵略が成就しないという現実を戦場で示すことだ。
米欧や日本は引き続き、ウクライナ支援に全力を挙げねばならない。同時に、プーチン氏が核兵器使用といった暴挙に出ないよう、抑止に万全を期したい。
ロシアのモスクワやサンクトペテルブルクでは、侵攻に反対する地区議員らがプーチン氏の辞任を求めた。戦局の不振を受けた異例の動きだ。プーチン氏はウクライナ支配の妄想を捨て、即時の全面撤退を決めるべきである。
イジュムでは住民ら450人以上が集団埋葬されているのが見つかった。拷問の痕跡がある遺体も確認された。キーウ郊外のブチャなどに続き、イジュムでも民間人が虐殺された疑いが強まっている。早急に国際調査を進め、責任を追及しなければならない。
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2022年9月19日付産経新聞【主張】を転載しています