~~
トルコ南東部のシリア国境付近を震源とする大地震の発生から1カ月が過ぎた。死者は両国で5万人を超えた。言語に絶する大災害である。
現地では多数の人が屋外で避難生活を強いられている。衛生状況の悪化で感染症の蔓延(まんえん)も懸念されている。予断を許さない状況が続く中、内戦など政治的な理由で支援を受けられない人たちがいる。
人道上の支援で格差や空白地域があってはならない。助かるはずの命が失われることがないよう、国際社会は改めて連帯し、救援に取り組まなければならない。
トルコとシリアをマグニチュード7・8の地震が襲ったのは2月6日の未明だった。その9時間後には同規模の地震が起きた。いずれも内陸地震としては最大規模とされ、余震も続いている。世界銀行は地震によるトルコの被害額は約342億ドル(約4兆6500億円)と推計した。トルコの一昨年のGDPの4%にあたる。
シリアの被害も甚大だ。内戦下にある北西部は、国際支援の空白地域になっている。この地域はアサド政権と対立する反体制派が拠点としており、政権の支配地域からの支援ルートがほぼ閉ざされているからだ。
やむを得ず国連はトルコ側から支援物資を搬入している。内戦による避難民支援のため、地震前は1カ所あった搬送ルートを3カ所に増やしたが、医薬品や食料、飲料水などの必需品は、ほとんど行き届いていないという。
米国は2月末の国連安全保障理事会の会合で、アサド政権とその後ろ盾となっているロシアに対し、政権支配地域から反体制派地域への支援を実現させるよう求めた。アサド政権は直ちにこれを実行に移すべきだ。国連も最大の強みである中立性を生かし、仲介や調整を続けてほしい。
日本は東日本大震災から12年を迎えた。当時、世界各国や地域から多くの温かい支援が寄せられたことを私たちは決して忘れない。
自然災害では、発生直後と1カ月後、半年後と時の経過で優先される支援内容が変わってくる。災害の多発国として、多くの知見を持つ日本だからこそ届けられる支援がある。
日本は国連をはじめ、内外の民間組織などと連携し、支援の先頭に立ち続けるべきだ。
◇
2023年3月6日付産経新聞【主張】を一部変更して転載しています