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日本固有の領土である北方領土の不法占拠とウクライナ侵略を正当化する暴言だ。到底容認できない。
ロシアのプーチン大統領が北方四島について「これらの島々はロシアが主権を持つ領土で、(自分が)訪問しない理由はない。今は忙しくて計画はないが」などと発言した。
サンクトペテルブルクでの国際会議に合わせた各国通信社との会見だ。今年1月、プーチン氏が「将来必ず訪れてみる」と北方領土初訪問という暴挙を示唆したことに関する質問への答えだ。
北方四島は1945年夏の終戦時、独裁者スターリンが日ソ中立条約を一方的に破って日本に侵攻し、不法占拠した。
プーチン氏は日露平和条約交渉についても「対話を継続するための条件が整っていない。再開を拒否しないが、再開のためには日本側がまず政策を変更すべきだ」と発言した。
平和条約交渉はウクライナ侵略開始直後の2022年3月、日本が対露制裁を科した報復としてロシア側が一方的に中断を表明した。「対話継続の条件」を取り払ったのは国際秩序を破壊したプーチン氏自身だ。
林芳正官房長官が「日本側に責任を転嫁しようとするロシア側の対応は極めて不当であり、断じて受け入れられない」と反論したのは妥当である。
平和条約締結について日本側の大前提は「北方領土問題の解決」だ。ところが、プーチン氏は「南クリール(北方四島)はロシアの領土で、国際法で確定している」と一貫して虚説を唱えて日本を欺き、領土返還を話し合う意図など全くない。
4年前には「領土割譲」を禁止する憲法改正を強行した。プーチン氏を領土交渉のまっとうな相手とはみなせない。
プーチン氏は、米欧がウクライナに供与した兵器でロシア領土の攻撃を認めた点にも言及した。「西側諸国は、ロシアが核兵器を絶対に使わないと信じている」とし、国家主権と領土の一体性が脅かされた場合、ロシアは「あらゆる手段が使用可能になる」と威嚇した。
日本はロシアの今後の不測の事態に備え、北方領土不法占拠と同様の非道な侵略を受けるウクライナと連携し、「四島返還」の正当性を粘り強く世界に発信し続けるべきだ。
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2024年6月9日付産経新聞【主張】を転載しています