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国軍がクーデターで権力を握ったミャンマー問題は、東南アジア諸国連合(ASEAN)にとって、進展のないまま3年目に入った。
ASEANは事態打開のため、昨年12月下旬にタイ・バンコクで閣僚級会議の開催を試みた。
だが、10カ国中参加したのは半数で、内部の分裂も露(あら)わになった。
ミャンマー国軍を正統政権とみなして同国以外から参加したのは、同じように軍を母体とするタイのプラユット政権、共産党一党支配のベトナムとラオス、フン・セン首相による長期政権が続くカンボジアだけだった。
会議前日には、国連安全保障理事会で、民主化運動指導者、アウンサンスーチー氏らの即時釈放を求める決議案が採択された。米英仏など12カ国が賛成したが、中国とロシア、インドは棄権した。
形式的な決議であるにせよ、全会一致のような形で、クーデターによる権力奪取は認めないとの強い意志表示ができなかったのは残念だ。
ASEANは、地理的に「自由で開かれたインド太平洋」の中心に位置し、加盟各国は、経済協力による連携などで強い力を発揮する。一方で、各国の間の経済格差が大きい上、自由や民主主義など共通の理念にも乏しいことから、米中などによる綱引きの場ともなってきた。
一昨年4月のASEAN特別首脳会議では、暴力の即時停止や全当事者による対話の開始などで合意したが、口約束だけで、ミャンマーの軍事政権による強権支配は放置されたままとなっている。
懸念されるのは、ミャンマーが国際的に孤立するにつれ、軍事協力を含めロシアへの接近を強めていることだ。ロシアの軍事技術の一部が提供される恐れもある。
日本は今年、先進7カ国(G7)の議長国を務める。来年まで2年間は、安保理の非常任理事国でもある。
ロシアによるウクライナ侵略や北朝鮮の核・弾道ミサイル、拉致問題についても、経済支援や人的支援などを通じて戦後培ってきたASEANとの信頼関係を生かした日本ならではの外交努力が求められる。
ASEANが法の支配や民主主義という価値を共有するパートナーとして統合を深めていけるよう日本が果たす役割は大きい。
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2023年1月19日付産経新聞【主張】を転載しています