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ミャンマーで国軍がクーデターを起こし、全権を掌握してから2年が経過した。多くの国民が命や自由を奪われ、国外脱出を迫られた。「アジア最後のフロンティア」と期待された市場も退潮を余儀なくされている。
しかし、国軍の弾圧にもかかわらず、人々は抵抗を続け、一部の民主派は少数民族と連携して武装闘争を展開している。この2年で改めて示されたのは、国軍には正当性も国民からの支持もないという事実だ。日本政府は対話を重視してきたが、米欧と協調し、国軍を孤立に追い込む路線へと舵(かじ)を切るべきである。
この2月はミャンマーにとってひとつの節目だった。軍が全権を掌握する根拠とした非常事態宣言は憲法で最長2年と規定されているからだ。しかし、国軍は1日、治安情勢を理由に、宣言の半年間延長を発表した。これにより、8月までとされた総選挙の実施も遠のいた。もっとも、民主化指導者のアウンサンスーチー氏に計33年に及ぶ刑期を科し、スーチー氏を排除したままの選挙では公正性は見込めまい。
ミャンマーの人権団体によると、国軍の弾圧で1月31日までに2940人が死亡、1万3763人が拘束されているという。避難民は100万人以上にのぼる。
歯がゆいのは日本の対応である。欧米にはない国軍との対話のチャンネルがあるとして、制裁とは距離を置き、暴力の即時停止などを求めてきたが、日本の声が届いた形跡は見当たらない。
ミャンマーの人権状況を担当する国連人権理事会のアンドリュース特別報告者は、各国の国軍への制裁が対露制裁と比べて「連携が足りず、戦略的でない」と指摘、日本も制裁に加わるよう報告書などを通じて呼び掛けた。
松野博一官房長官は2月1日の記者会見で「国軍は国際社会の声に聞く耳を持たない。深刻に懸念する」と述べたが、現状を憂慮するだけでは解決にならない。
国際社会の関心の多くが、ロシアによるウクライナ侵略に向けられているが、ミャンマーを置き去りにすることは、中国やロシアなど強権主義の指導者を勢いづけることになる。両国はミャンマー国軍の後ろ盾とも指摘されている。日本は先進7カ国(G7)議長国として、米欧と足並みをそろえて制裁を検討すべきである。
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2023年2月4日付産経新聞【主張】を転載しています