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「ローザンヌ国際バレエコンクール」(スイス)で今年も日本人が入賞した。8位入賞の大阪府の中学生、宮崎圭介さんの快挙を喜びたい。
創設50年を迎えた「ローザンヌ」は、英ロイヤルバレエなどで活躍した熊川哲也さんや吉田都さんらを輩出した。
多くの日本人は、同コンクールを通じ、日本のバレエが世界レベルにあることを知った。一年で最も寒さが厳しいこの時期に、日本人ダンサーの朗報を聞くことを楽しみに待つ人もいる。
他のバレエコンクールと一線を画す「ローザンヌ」で問われるのは「将来性」や「素質」だ。入賞者は奨学金を得て、世界有数のバレエ団やバレエ学校で研修を受けられる。コンクールの目的は「世界中の優れた才能を探し求め、若いダンサーに最良の教育と環境を提供すること」にある。
半世紀の歴史を持つコンクールは、街おこしの成功例でもある。バレエとローザンヌの街をこよなく愛した地元の実業家夫妻が、シーズンオフの厳寒期にコンクールを開催して街に活気を生み出したいと1973年に始めた。
人口が十数万人に過ぎないこの町の世界的知名度を支えているのは、国際オリンピック委員会(IOC)が本部を置くことと、バレエの存在である。コンクールの入賞者が世界的に活躍するにつれ、今では世界各国からバレエファンが詰めかけるようになった。
人口減少に悩む日本の地方都市にとっても手本となる。
国内でも、さまざまな挑戦がみられる。例えば、かつて炭鉱の町として栄えた北海道夕張市では石炭産業の衰退とともに閉山が相次ぎ、人口が大幅に減少した。地域再生に向けて「ゆうばり国際ファンタスティック映画祭」を開催した。映画祭は途中、夕張市に開催補助金の支出を打ち切られたが、有志により再開されている。
大分県の中津江村はサッカーのワールドカップ、2002年日韓大会でキャンプ地にカメルーン代表を招(しょう)聘(へい)し、その知名度から日田市と合併後も「中津江村」の名を残した。大会後も、スポーツにとどまらない分野でカメルーンとの交流を続けている。
いずれも再興の切り札とまではなり得ていないが、応援したい試みである。われもローザンヌに続けと、多くの市町村に妙手を競ってほしい。
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2023年2月15日付産経新聞【主張】を転載しています