新型コロナウイルスによる肺炎拡大が続く中国が、東シナ海で日本や台湾を挑発している。
世界と協力して新型肺炎を封じ込めなくてはならないときに、中国は何をしているのか。
無神経な振る舞いを直ちに改めるべきだ。
中国海警局の公船4隻が11日連続で、尖閣諸島(沖縄県)周辺の日本領海外側の接続水域を徘徊(はいかい)している。うち1隻は機関砲のようなものを搭載していた。海上保安庁の巡視船が領海に近づかないよう警告し、監視を続けている。尖閣諸島は日本の島である。中国公船はすぐさま立ち去ってもらいたい。
9日には、中国軍のH6爆撃機4機が先島諸島南方の太平洋上から、沖縄本島・宮古島間の宮古海峡上空を通過して大陸方面へ飛び去った。航空自衛隊の戦闘機が緊急発進(スクランブル)した。H6爆撃機は、対地攻撃可能な巡航ミサイルを搭載していた。沖縄が射程内にあるのは明らかだ。
台湾への挑発も露骨である。
9、10日の2日連続で中国軍のH6爆撃機やJ11戦闘機などが台湾を周回飛行した。10日には爆撃機の護衛機が台湾海峡の中間線を越え、台湾本島側に侵入した。
台湾で対中政策を担う大陸委員会は、新型肺炎対応に集中せよと中国を批判した。蔡英文総統もフェイスブックへの投稿で、新型肺炎が大流行中に中国が軍を動かすことは「無意味なだけでなく不適切」だと指摘した。
どのような場合でも挑発行為は認められないが、国際協力が必要である今は、なおさら不適切といえる。安倍晋三首相や茂木敏充外相は台湾にならって、中国政府にくぎを刺してもらいたい。
新型肺炎の感染者と死亡者は中国で増加の一途をたどっている。日本など世界は中国の人々に支援の手を差し伸べている。
日本のドラッグストアなどには「武漢、加油(がんばれ)」と書かれた紙が貼られ、日本の官民からはマスクや防護服などの医療物資が送られた。中国外務省報道官は記者会見で、日本の支援に感謝の意を表明している。
習近平国家主席は感染予防と抑制は「人民戦争」だと述べ、危機感をあらわにしている。中国の軍や海警局の東シナ海での行動は国際協力に基づく新型肺炎との戦いに水を差すだけだ。習主席は挑発の中止を命じるべきである。
2020年2月13日付産経新聞【主張】を転載しています