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臨時国会が12月21日、閉幕した。新型コロナウイルス禍に対応する経済対策として、35兆9895億円の令和3年度補正予算を成立させた。
それでも国会には不満が募る。大きな仕事を果たさなかったからだ。
中国政府による新疆ウイグル自治区などでの人権侵害を問題視する国会決議の採決が、先の通常国会に続き見送られたことである。
国民の期待からかけ離れた結果だ。来年1月召集の通常国会で、速やかに対中非難の人権決議を採択しなければならない。
対中人権決議の見送りには、自民、公明両党の執行部に大きな責任がある。
先の通常国会では、6月の段階で日本維新の会、国民民主党、立憲民主党や自民の外交部会が決議案の了承手続きを終えていたが、決議に慎重な公明に配慮した自民執行部の判断で葬られた。
今国会も同じ構図だった。「日本ウイグル国会議員連盟」(古屋圭司会長)や「南モンゴルを支援する議員連盟」(高市早苗会長)など複数の議連による原案をもとに調整が行われ、野党側からは大筋合意が得られていた。
公明幹部の要請を丸吞(の)みし、決議案の表現を弱めた。名称から「非難」の言葉を削り、人権侵害の即時停止を求めた部分を、中国当局に人権状況の説明責任を果たすよう求める内容へ変更した。
それでも、自民の茂木敏充幹事長は、採決を求めた古屋、高市両氏らに「内容はいいが、タイミングの問題だ」と述べ、採決を認めなかった。北京五輪をめぐる外交的ボイコットについて、政府対応が注目されているからという。
これはおかしい。タイミングをいうなら、人権決議こそ、一日も早い採決が必要だった。
自公の執行部の対応は中国政府におもねるもので、言語道断だ。日本の国会が深刻な人権侵害に抗議、非難の声を上げられないのは本当に恥ずかしい。
両党幹部は、不妊手術を強制された後、亡命したウイグル人女性ら弾圧の被害者から話を聞いてみたらどうか。
日本や欧米諸国はソ連の脅威に対抗するため中国と連携した。だが今は、中国政府が国際平和の攪乱(かくらん)者、人権弾圧の当事者である。昔からの惰性で安易な友好を続けては危うい時代になったと自公執行部は自覚してもらいたい。
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2021年12月22日付産経新聞【主張】を転載しています