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Kamila Valieva (Evgenia Novozhenina/REUTERS)

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北京冬季五輪は将来に大きな禍根を残した。

 

ドーピングはスポーツ界が最も憎むべき敵である。公平、公正を前提とするスポーツの価値ばかりか、当該選手の心身の健康を破壊する。

 

禁止薬物が検出されたフィギュアスケートの女子スター選手、ロシア・オリンピック委員会(ROC)のカミラ・ワリエワについてスポーツ仲裁裁判所(CAS)が五輪出場の継続を認めた。15歳のワリエワは世界反ドーピング機関(WADA)が規定した16歳未満の「要保護者」に当たることなどが考慮されたのだという。

 

耳を疑う決定だ。若年層の選手を何から保護すべきなのか。その第一が薬物汚染からであろう。組織の関与を問わず、年齢を理由に出場を認めた裁定は後続の若い才能をも誤った勝利第一主義にさらす結果を呼ぶ。そして真に守られるべきは薬物とは無縁な、世界のクリーンな選手のはずである。

 

昨年12月の国内大会の検査から検出された「トリメタジジン」はWADAの禁止薬物に指定されており、過去には中国の競泳選手、孫楊やロシアのボブスレー選手も処分対象となったことがある。ロシア側のスタッフが「知らなかった」ことはあり得ない。

 

そもそもロシアは2014年ソチ五輪などでの組織的ドーピング違反による処分中であり、北京五輪には潔白を証明できた選手だけが個人資格で参加している。

 

ワリエワはこの点からも参加資格を失うはずであり、大掛かりな隠蔽(いんぺい)工作が認定されたロシア反ドーピング機関(RUSADA)が競技続行を後押ししている構図はなんという壮大な茶番か。

 

情けないのは、この問題に毅然(きぜん)とした態度を貫けない国際オリンピック委員会(IOC)である。判断をCASに丸投げして自らの立場を明らかにしない。

 

リオデジャネイロ五輪でもロシアの参加問題を各競技団体に一任するなど、IOCの弱腰が指摘されてきた。制裁中の国のトップとして参加が禁じられていたプーチン大統領の開会式出席を黙認したことも、これを象徴する。

 

CASの裁定はあくまで競技続行を認めたもので、団体戦の結果承認やコーチ陣を含む組織への正式処分などは今後の懸案となる。IOCはCAS裁定を待たず、ドーピングと決別する意思を明確に示すべきである。

 

 

2022年2月15日付産経新聞【主張】を転載しています

 

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