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中国が9月16日に環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)への加入を申請したのに続いて、台湾も22日、TPP加盟を申請した。中国に先を越されると台湾参加の道が閉ざされる。そんな懸念が台湾の申請を後押ししたのだろう。
これに対して中国外務省は翌23日、「あらゆる公的な協定や組織への(台湾)加入に断固反対する」と表明した。TPPに加わるには全参加国の同意がいる。中国が台湾加入を阻むため各国への外交圧力を強めることは想像に難くない。
そんな中で日本がなすべきことは、はっきりしている。台湾加入を全面的に支援することだ。日本にとって新規加入にふさわしい相手は中国ではなく台湾である。
茂木敏充外相が、日本と法の支配などの基本的価値を共有し、経済関係も密接な台湾を「極めて重要なパートナー」と評し、申請を歓迎したのは当然だろう。
半導体などのハイテク産業で優位に立つ台湾との関係強化は、通商のみならず、覇権主義的に振る舞う中国を見据えた経済安全保障面にも影響する。それなのに日台間には通商協定がない。しかも台湾は、日中韓など15カ国が署名した「地域的な包括的経済連携(RCEP)」にも入っておらず、TPP加入の意義は大きい。
質の高いTPPルールを守る上で、台湾の蔡英文総統が「全てのルールを受け入れる用意がある」と表明したことは重要だ。台湾には原発事故を受けた日本産食品への輸入禁止措置がある。これを速やかに撤廃し、TPPへの意欲を行動で示してほしい。
一方、中国が台湾の申請にかみつくのはおかしな話だ。中国と台湾はいずれも世界貿易機関(WTO)に加盟している。それなのに台湾のTPP入りはダメというのでは筋が通らない。そもそも中国はTPPのメンバーではなく、交渉すら始まっていない。その段階で自国以外の加入に影響力を行使するのか。中国がTPPの判断に従うのではなく、自国の考えに各国を従わせる。そんな姿勢をみせるのならば、ますます中国の加入には慎重にならざるを得ない。
中国と台湾の加入申請に対する受け止め方は加盟国間でも温度差があるだろう。そこに今年のTPP議長国である日本はどう対応するのか。自民党総裁選のさなかである。各候補には、中国と台湾の申請を具体的にどう扱うべきかを明確に示してもらいたい。
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2021年9月25日付産経新聞【主張】を転載しています