~~
ブリンケン米国務長官が、米国は台湾の国連活動への「意味ある参加」を支持するとし、他の国連加盟国にも同調を求める声明を発表した。
新型コロナウイルスの大流行に直面し、台湾は世界でも第一級の対応を見せた。だが、5月の世界保健機関(WHO)総会は中国が立ちはだかってオブザーバー参加が認められず、世界はその先進的な取り組みを学ぶことができなかった。
ブリンケン氏は「これは政治問題でなく、現実的な課題だ。台湾の排除は、国連と関連機関の重要な活動を弱らせる」と述べた。
極めてもっともな指摘だ。
台湾は2400万の人口を擁する。世界を襲った感染症との戦いで、これほどの地域が国連機関の「空白」となる不利は大きい。
台湾は、公衆衛生の分野だけでなく、多くの分野で先進的な技術を持つ。これらを世界全体の繁栄につなげるのも、国連や関連機関の役割である。
WHOのオブザーバー参加に向けては日本も後押ししたが、力が及ばなかった。中国が強い影響力を有するWHOの現状も、国連機関の台湾排除も放置できない。ブリンケン氏の呼びかけに早速、賛意を表明すべきだ。
11月に開催される国際刑事警察機構(ICPO)の年次総会を前に台湾が参加への支持を求めている。犯罪に対処する国際連携においても世界に「空白」を作るべきではない。特に焦点のサイバーセキュリティー問題では多くの国・地域の声を反映させたい。
ブリンケン氏の声明に対してはむしろ、これに過剰に反応する中国政府の異様な姿が浮かびあがった。在米の中国大使館は報道官談話で、「一つの中国」原則への挑戦だと非難し、「絶対に受け入れられない」と猛反発した。
バイデン米大統領は、オンライン形式で開かれた東アジアサミットで、台湾に対する中国の行動を「強圧的」と批判した。軍事的圧力から、米国は台湾を守り抜かねばならない。
9月には、環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)に中国と台湾が相次いで加入を申請した。台湾が入れば、台湾が経済で名を連ねる数少ない多国間の枠組みとなる。日本は全面的に支援したい。中国が先に加入を認められれば、台湾を拒否するのは間違いない。日本は毅(き)然(ぜん)と対応すべきだ。
◇
2021年10月29日付産経新聞【主張】を転載しています