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北朝鮮による拉致被害者5人が帰国してから10月15日で20年となった。帰国した被害者の一人、地村保志さんは15日、「拉致問題が解決したわけではなく、節目、記念日ととらえることはできない」と訴えた。
今も北朝鮮に残る被害者全員の奪還、帰国に向けて拉致問題は継続中であり、終わっていない。
20年は何ら進展がみられぬ長い歳月であり、手をこまねく政府は大いに反省すべきである。
平成14年10月15日、地村さんら拉致被害者5人は羽田空港で特別機のタラップを下り、祖国の地を踏み、肉親と再会した。
だがそこには、13歳で拉致された横田めぐみさんや、欧州留学中に拉致された有本恵子さんら、北朝鮮が一方的に「死亡」と告げてきた被害者の姿はなかった。
それは新たな長い戦いの日々の始まりだった。
めぐみさんの母、早紀江さんは9月、「いつまでたっても解決しない。言いようのないいらだちを強く感じる。むなしく、地獄の苦しみを味わっている」と述べた。母の血を吐くような心の叫びを、国民全てがわがこととして聞くべきである。
地村さんは「家族だけでなく被害者自身が高齢化している」「早くしないと生きたままの奪還は難しくなる。今、解決しなければ何の意味もないし、悲しい歴史になってしまう」とも述べた。
20年前に帰国した拉致被害者の蓮池薫さんも、産経新聞の取材に「今ここを逃せば、半永久的に支援は得られないと北朝鮮に認識させることが大事」と訴えた。
拉致問題は「全て解決済み」とする北朝鮮を交渉のテーブルにつかせるためには、安倍晋三元首相が「拉致の解決なしに北朝鮮は未来を描けないと理解させる」と繰り返し述べた圧力の徹底を強化する以外に道はない。
帰国した被害者の一人、曽我ひとみさんは15日、めぐみさんの同級生が新潟市で開催したチャリティーコンサートに参加した。北朝鮮の招待所でめぐみさんと一緒に「紅葉」「故郷」などの童謡を小さな声で歌った思い出を語った曽我さんは「次のコンサートではめぐみさんと手をつなぎ、大きな声で合唱したい」と話した。
切実な願いを実現させることは政府の責務であり、これを後押しすべきは国民の世論である。
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2022年10月18日付産経新聞【主張】を転載しています