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さいたま市内の新幹線で1月23日、架線トラブルが起き、東北・上越・北陸新幹線が停電で止まった。事故後、東京―仙台、高崎間が終日運休し、約12万人に影響した。
停電は23日午前10時ごろ、金沢発東京行き北陸新幹線かがやき504号が大宮―上野間を走行中に発生した。架線は約150メートルにわたって垂れ下がり、かがやきのパンタグラフと接触したとみられる。かがやきは緊急停止したまま動けなくなり、JR東日本は乗客約350人を線路脇に降ろし地上に避難させた。
最近、事故や地震、台風など自然災害によって「列島の大動脈」といわれる新幹線が、長時間、広範囲にわたってストップするケースが目立つ。
昨年8月のお盆休み期間には台風7号による大雨で、計画運休を含め3日連続で東海道新幹線のダイヤが大混乱した。
想定外の降雨で車両や要員のやりくりに手間取り、情報を知らずにやってきた乗客が駅に滞留し、混乱に拍車をかけた。
今回、JR東日本は、事故発生直後から、ホームページだけでなくメディアを通じて復旧が大幅に遅れる見込みを早めに告知した。東京駅など主要駅に職員を多数配置し、乗客の誘導にあたったのは一歩前進だ。
しかし、復旧作業中に作業員が感電し、2人がやけどを負った影響もあって復旧に約20時間もかかったのはいただけない。原因となった架線のたるみを含め、安全の要である保線作業が十分かどうか検証が必要だ。
東京―大宮間は、東北新幹線など3新幹線すべてが乗り入れている「喉首」にあたる区間だ。ここで事故が起きれば、全線に影響が及ぶ。
かつて東北・上越新幹線は、大宮始発だったため、大宮駅には新幹線ホームが6つある。事前に緊急時用の運行管理システムを構築していれば、かなりの列車は大宮で折り返し可能だ、と指摘する専門家もいる。
JR各社は、事故や災害が起きると、安全確保のため全面運休を優先する傾向にある。やむを得ない面もあるが、ケース・バイ・ケースで、大手私鉄のように運行可能になった路線から順次、再開していく柔軟性と日頃からの準備も必要だ。JR東日本には事故の原因究明と再発防止を図るとともに、「乗客第一」の対応を強く望む。
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2024年1月25日付産経新聞【主張】を転載しています