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中国の脅威に対して日米同盟の抑止力を強化することが平和を保つ近道である。
日米の外務・防衛担当閣僚による安全保障協議委員会(2プラス2)が3月16日、東京で開かれた。
日米両政府は共同文書を発表し、中国を名指しして「ルールに基づく国際体制を損なう、地域の他者に対する威圧や安定を損なう行動に反対する」と表明した。
共同発表は尖閣諸島(沖縄県)や台湾、南シナ海の問題、香港と新疆ウイグル自治区での人権弾圧についても中国を強く牽制(けんせい)した。中国海警法に「深刻な懸念」を示し、北朝鮮の非核化と拉致問題の即時解決の必要性を確認した。
日米が、中国の「既存の国際秩序と合致しない行動」を問題視し、抑止していく決意を示したことは評価できる。
バイデン米政権発足後、国務・国防両長官がそろって外国を訪問したのは初めてだ。菅義偉首相は4月上旬に訪米し、外国首脳として初めてバイデン大統領と対面での会談に臨む。バイデン政権の日米同盟重視の表れといえる。
米側は2プラス2で、尖閣を含む日本防衛への「揺るぎないコミットメント(誓約)」を改めて約束した。歓迎できるが、日本は安堵(あんど)するだけではいけない。
対中抑止の方針に魂を入れる必要がある。力の信奉者である中国共産党政権は言葉だけでは抑えが効かないからだ。
米インド太平洋軍のデービッドソン司令官は9日、米議会で中国の軍拡で「通常戦力による対中抑止力が崩壊しつつあり、米国および同盟諸国にとって最大の危機となっている」と証言した。茂木敏充外相は2プラス2で「インド太平洋の戦略環境は以前とは全く異なる次元にある」と語った。
危機は深刻だ。東京での2プラス2開催は日本が中国の真正面、最前線に位置するからにほかならない。日米は今後、同盟充実の具体策を詰めていく。厳しい財政事情だが日本は世界第3位の経済大国だ。米国と協力して対中軍事バランスを有利に導くべきだ。
日本は共同発表で、「国家の防衛を強固なものとし、日米同盟をさらに強化するために能力を向上させることを決意した」と表明した。これを口約束に終わらせてはいけない。菅首相には防衛力強化に向け、防衛予算の思い切った増額を決断してもらいたい。
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2021年3月17日付産経新聞【主張】を転載しています