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皇后陛下は12月9日、還暦を迎えられた。
今年は平成5年のご成婚から30年の節目にあたり、人生の過半を皇室で歩まれたことになる。
天皇陛下とご一緒に、いつも日本の発展と国民の幸せを祈ってこられた。多くの国民に勇気と感動を与えてくださった。深い感謝とともに、皇后陛下の還暦を心よりお祝い申し上げたい。
皇后陛下はご成婚後、16年に適応障害と診断され、長期にわたり療養生活を送られた。しかし徐々に回復され、新型コロナウイルス禍が落ち着きをみせてからはご公務の機会が目に見えて増えている。
天皇陛下とご一緒に、昨年9月には英国のエリザベス女王の国葬に参列された。皇后となられて初の外国訪問だった。両陛下は今年6月にもインドネシアを公式訪問された。
今年は園遊会や全国戦没者追悼式など国内でのお出ましが多く、地方でのご公務は昨年より倍増した。
皇后陛下はお誕生日に際し、宮内庁を通じて文書でご感想を明らかにされた。その中で、地方行幸啓について「それぞれの地域の特色に触れ、この国の自然・風土や歴史・文化の豊かさを改めて感じることができました」とつづられた。
「行く先々で、多くの方に温かく迎えていただいたことも嬉(うれ)しく、それぞれの場所でいろいろな方のお話を直接伺えたことも有り難いことでした」とのお気持ちも示された。
皇后陛下が、どれほど国民とのふれあいを大切にされているかがうかがえる。
わが国における皇后の役割は極めて重要だ。近代における礎を築いたのは明治天皇の皇后、昭憲皇太后である。女子教育の振興に尽くしたほか、日本赤十字社の発展や養蚕業の奨励などに努めた。
その伝統と役割は歴代皇后に引き継がれ、皇后陛下もしっかり果たされている。今年も日本赤十字社名誉総裁としてのご活動や、皇居内での養蚕に取り組まれた。
体調が万全ではない中、天皇陛下を支え、愛子内親王殿下を育てられた。皇后陛下のご存在は大きい。
皇室と国民の絆は日本の国柄だ。一層のご回復とご活躍をお祈りしたい。
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2023年12月9日付産経新聞【主張】を転載しています